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<食卓ものがたり> モヤシ(埼玉県深谷市)

生産したモヤシを手に取る飯塚雅俊さん=埼玉県深谷市で

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 安い野菜の定番といえばモヤシ。スーパーでは一袋(二百グラム)二十〜三十円、特売ならそれ以下も珍しくない中、一袋百六十円前後の高級品がある。ほとんどが手作業のため値が張る。肝心の味は? 創業約六十年の「飯塚商店」のある埼玉県深谷市を訪ねた。

 JR深谷駅から車で約十分。郊外にある小さな体育館ほどの栽培場で、タオルを頭に巻いた生産者の飯塚雅俊さん(53)が迎えてくれた。いきなり「生で食べてみて」と勧めてきた。

 そのモヤシは、普段スーパーでみる太いモヤシに比べると細身。長さは十センチほどで、同じ長さの根っこまである。根を残すのにも意味がある。新鮮さを保ち、風味が残る、という。

 ただ見た目は普段の方が良さそう。言われるまま口の中に放り込むと、歯応えはシャキシャキ、みずみずしく甘みもある。さらに飯塚さんは「このモヤシは煮るとだしがとれる」と、さっと煮たお湯を出してくる。半信半疑で口にすると、しっかり野菜のうま味が出ていた。

 モヤシは豆の持つ栄養分で成長する。飯塚さんは「種から発芽する生命力をいただくのがモヤシ。本来持っているものをできるだけ妨げないこと」と語る。

 作業の流れは他のモヤシと変わらない。暗い部屋で栽培。水を与えて発芽させ、水洗いして出荷するまで約一週間かかる。

 ただ作業の一つ一つにこだわりと手間をかけるのが飯塚さん流。水やりは温度や湿度、成長具合を見て調整。水で太ってしまうのを避けるため「モヤシが『もう少しほしい』と思う手前までしかあげない」。出荷前の水洗いも、傷つけないように丁寧に手で洗う。

 こうした作業のほとんどは、先代が一九五九年に創業して以来変わらない。太いモヤシが流行した時、廃業間際まで追い詰められたことも。しかし信じて続けてきたら「おいしい」と消費者からほめられた。今も経営は楽ではないが、東京都内や横浜市の百貨店も取り扱うまでになった。飯塚さんは「モヤシ本来のありのままの味を広めたい」とやり方を貫く覚悟だ。

 (文・写真、寺本康弘)

◆体験

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 飯塚商店では毎月、第2、4日曜日にモヤシの収穫と袋詰めができる体験会を開いている。

 モヤシを育てるコンテナからモヤシを洗うためのプールに移動させる作業や、収穫したモヤシを袋詰めする作業を体験できる。モヤシがどのように生産されているかの過程を解説を聞きながら見学できる。また家庭でモヤシを栽培できるキットももらえる。

 時間は1時間半から2時間程度。参加費は1500円。事前予約が必要。問い合わせは同店=電048(571)0783=へ。

 

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