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<なくそう長時間労働> 保育士、サービス残業常態化

誕生会に向け、勤務時間外に出し物の練習をする保育士ら=名古屋市で

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 幼稚園に比べて子どもの在園時間が長い保育園では、保育士らからサービス残業や仕事の持ち帰りが「当たり前になっている」という声が上がっている。運営費となる国や自治体からの補助金の額が上積みされて各園の保育士が増えない限り、保育士は約八時間の勤務時間中、ずっと子どもたちをみる保育業務しかできないのが実態。保育以外の業務は時間外に回さざるを得なくなっている。

 「♪おた〜まじゃくしのおかあさんは、どんなおかあさんかな?」。四月下旬、名古屋市内の私立保育園。四月生まれの子の誕生会に向けて、保育士四人が出し物の練習を重ねていた。

 毎月違う出し物を考えて練習し、担任からのメッセージを添えた誕生日カードを作る。「子どもたちが喜ぶ顔を思い浮かべると、手は抜けない」と、担当の保育士(40)。

 実はこの時間は、勤務時間外。一時間の「サービス早出」だ。午前九時からいすを並べたり、飾り付けをしたり、出し物の練習をしたり。十時に子どもたちが集まって誕生会が始まると、ようやく勤務時間とみなされる。

 こうした仕事を勤務時間外にせざるを得ないのは、他の園でも同じ。その理由を、元帝京大教授で保育研究所(東京)の村山祐一所長は「保育士は勤務時間中、ずっと子どもたちの保育をする前提で制度が設計されている」と説明する。

 保育士の業務は保育が中心で、園児の数などに応じて補助金が運営費として配分される。ただ、女性の社会進出が進むにつれ開園時間が長くなり、時代とともに保護者への連絡、お便り書き、育児相談といった業務も重視されるようになった。一方、保育園は福祉施策という側面があるため、園から税金を原資とする補助金の増額を要求しにくく、「補助金が伴ってこなかった」と村山さんは指摘する。

 この保育園では、職員会議は勤務時間内に開く。その間、クラスはパート職員に委ねるなど、残業を減らす努力を重ねる。しかし、その分人件費はかかる。人を増やせば一人当たりの賃金を減らすほかなく、園長は「園だけの努力では、これが限界」とこぼす。

 現在、保育園は毎日十一時間以上開き、土曜日も対応するよう定められている。春休みや夏休みはなく、開園日は年三百日ほど。一方、幼稚園に子どもがいるのは四〜六時間ほどで、開けるのは年約二百日。保育園は幼稚園の約二〜三倍、開園時間が長い計算だ。にもかかわらず国は、保育園と幼稚園の人件費をほぼ同じと見積もっている。

 多くの園では残業代や手当が支給されているものの、十分な金額とは受け止められておらず、残業時間や残業の作業量に応じて上限なく増やすのも難しい。「残業のほどんどはサービス残業」とぼやく保育士は多い。

 「手本にするべきは、幼稚園の仕組み」と、村山所長は指摘する。子どもたちが帰った後、一日二〜三時間を準備や研修にあてられる。夕方まで預かる園では、預かりは別の職員が担当することが、制度で保障されている。

 村山所長は「保育士が残業に耐えられずに辞めるなどして保育士不足に陥っている。悪循環を断ち切るには、賃金アップだけではなく、保育士を増やし、サービス残業をなくすことが必要」と指摘する。

 (稲熊美樹)

 

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