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<天職ですか> 靴のお手入れ職人・渡辺忍さん(31)

持ち込まれた革靴の手入れをする渡辺忍さん=大阪市北区で

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 ブラシでほこりを落とし、指に巻いた布で汚れを取る。そこにクリームを塗ると、先ほどまでくすんでいた革靴は見違えるほどの輝きを取り戻した。「考え方は、お肌のケアと似ているかもしれませんね」とほほ笑む。

 靴の手入れなどを手掛ける「アールアンドデー」(東京)の社員。仕事場は、一日数十万人のサラリーマンが行き交う大阪駅ビルの商業施設「ルクアイーレ」の中にある。

 洋服好きが高じ、高校を卒業するとスーツ専門店の販売員に。「靴は値が張っても高品質なものを買い、長く使いなさい」と、先輩から販売員としての身だしなみを指導された。そこで、働き始めてほどなく買ったのは五、六万円の英国製高級靴。本などを参考に手入れを繰り返すと、使い込むほどに輝きを増していく。その不思議さや美しさにすっかり魅了され、二十七歳で転職した。

 革靴の手入れというと、ピカピカに輝かせることと思われがちだが、心がけるのは「長く履いてもらうためのケア」。そのために必要な日常の手入れを施したり、その方法を教えたり。「雨にぬれてできた染みを取り除いて」「生えてしまったカビをどうにかして」といった注文にもこたえる。

 革靴だけでなく、日に焼けて色あせたスニーカーの補色などの仕事も舞い込む。「ここまで奇麗になるとは」と驚く客の表情がやりがいだ。

 革は天然の素材のため一枚ずつ微妙に風合いが異なる。一組の靴でも、よく見ると左右で色合いが微妙に違うこともある。時折、「左右で色を同じにできないか」などの相談も寄せられる。難しい依頼だが、試行錯誤しながら最適な方法を模索する。客の要望に応じるために、十万円もした自分の靴をわざと水にぬらし、艶の取り戻し方を探求したこともある。

 安価な靴はたくさん出回っている。しかし、高くても良いものは適切に扱えば長く使えて、結果的には出費を抑えられることもある。そこから、物を大事に使い続ける楽しさを多くの人に知ってほしいと願う。「短い期間で使い捨てるのではなく、長く履く文化を育てたいんです」

 (文・写真 諏訪慧)

 

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