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妥当性なければ退去不要 古くなった借家、取り壊し通告

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 築八十年の借家で一人暮らしをしているという愛知県内の七十代女性から「大家に『家が古くなり、取り壊したいので立ち退きを』と言われた」という相談が本紙に寄せられた。古い家を取り壊したいという家主の事情も理解できるが、転居先の当てもない入居者は大変だ。引っ越すにしても、その費用は請求できるのだろうか。どう対応したらよいのか、専門家に聞いた。

 「家主に明け渡しを求める正当な理由があると認められなければ、明け渡さなくていいと、借地借家法で定められています」。立ち退きについて、不動産の問題に詳しい滝沢香弁護士は、こう指摘する。

 訴訟になった場合、立ち退き請求の妥当性は、家主の退去を求める理由と、入居者が受ける不利益、入居年数、修繕の必要性などから総合的に判断される=図表。

 滝沢弁護士は「一般には入居者の不利益が、あまりに大きくならないことが重視される」という。女性の場合、退去による女性の不利益と、家の老朽化の程度が比較検討されることになりそうだ。滝沢弁護士は「現実に居住できている建物なら、古い家でもすぐに倒壊の危険性があるとは簡単に認められない」と話す。

 逆に、明け渡しが妥当とされるには、安全性が担保されず、補修に多額の費用がいることなどを家主が立証する必要がある。

 ただ、「地震で崩れないか心配」という家主の不安も理解できる。こうした場合は、家主が立ち退き料を支払って、入居者の同意を得ることが多い。ただ、金額は両者の話し合いで決まり、滝沢弁護士は「明確な相場はない」という。

 愛知県内のアパートの大家らでつくる愛知共同住宅協会理事を務める杉本みさ紀弁護士は「引っ越し代や転居先物件の仲介業者への手数料など、転居に伴う初期費用であれば、双方とも納得しやすいのではないか」と考え方を示す。

◆高齢者、困難な転居先探し

 古い住宅の入居者が、取り壊しを理由に家主に退去を求められるケースでは、入居者が高齢者ということが少なくない。家賃の支払いに不安がなく、連絡を取り合う親族がいる人はよいが、そうでないと立ち退き料をもらったとしても転居先が簡単に見つからないなどの問題に直面することがある。

 日本賃貸住宅管理協会(東京都)が二〇一五年三月、全国の家主約十四万人を対象にしたアンケートによると、約六割が高齢者に部屋を貸すことにためらいを感じていた。杉本弁護士は「収入だけでなく、孤独死や認知症などを心配する人が多い」と話す。

 身寄りがない人はより深刻だ。賃貸契約の際、保証会社を使った契約が増えているが、連帯保証人が不要でも緊急連絡先は必要。法的な義務もなく、知人や友人も引き受けられる。ただ、「第三者に頼みづらいのが実情で、貸す側も身内の方が安心する」と杉本弁護士は指摘する。

 公営住宅の場合も、入居資格に緊急連絡先を求める自治体があり、公営だから入りやすいとは必ずしもいえないという。

 (添田隆典)

 

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