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年金問題、人ごとじゃない 学生自らが啓発活動

「誤った知識が制度への不満を高めている」と報告されたユース年金学会=東京都港区の慶応大で

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 メディアで大きく取り上げられる年金制度。でも、その内容を本当に理解できている? 素朴な疑問を出発点に、大学生らが調査発表や、制度への加入を促す動画制作などに取り組み始めた。若い世代はまだ先のことと縁遠く感じがちだが、少子化が進めば将来の年金額にも大きく影響する。制度を学び、身近な問題として捉え直すのが狙いだ。

 昨年十一月下旬、東京都内の慶応大キャンパスで大学生が主体となったユース年金学会が初めて開かれた。「年金についての問題を六問出題したところ、80%の人は正答が二問以下か全問不正解でした」。お茶の水女子大生活科学部の東井愛佳(あずまいまなか)さん(21)はパワーポイントを使いながら、ゼミの仲間と首都圏の二十三大学で集めたアンケートの結果を発表した。

 調査では、国民年金の保険料額や支給額などの基礎知識を問うとともに、年金制度への評価もたずねた。現行制度に満足している人は九百六十七人中八十六人と10%にも満たず、不満のある人が過半数の五百十五人に上った。正答率も予想より低く、「誤った知識が制度への不満をさらに高めているのではないか」と分析した。

 学会で発表したのは三大学の四チーム。いずれも三年生中心の若い構成だったが、会場には制度を担当する厚生労働省職員や大学教員らの姿も。低年金の人には別の所得保障を考えるべきだと主張した学生には、年配の研究者から「そもそも全国民の老後の基本的所得をカバーするのが基礎年金だ」と鋭い反論が飛び、議論は白熱した。

 年金に対する若者の意識調査の結果について発表した帝京大経済学部の関恕憲(せきひろのり)さん(21)は、親の意見が子どもにも影響すると指摘。「厚労省の人からも共感が得られた。もっと年金を知りたいという思いを強くした」と話す。

 山形県酒田市の東北公益文科大の阿部公一教授(公的年金論)は「若い世代の関心が低いのは、手続きや負担を親任せにしていることが原因では」と考えている。

 一昨年、学内でアンケートを実施したところ、保険料を納めている学生の86%は保護者に費用を負担してもらっていた。

 阿部教授は、まずは年金を「自分ごと」として捉えてもらうため、講義で国民年金への加入を促す動画の制作を課題にした。学生らが自ら出演し、スマホで撮影。細かいシナリオ作成から編集まで全てが手作りだ。

 約十人の二年生が取り組んだ動画は昨年秋に完成し、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開した。飽きさせないよう工夫したクイズ番組のような形式と「ゆるい雰囲気」で若い世代の共感を狙う。

 ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸・年金研究部長は「今後、制度の支え手が少なくなることを考えれば、若い人の方が高齢者よりも強い不満を感じるのは当然。制度改正の持つ意味も世代によって違う。早くから年金に関心を持って自ら学ぶことが重要だ」と話している。

 <公的年金制度> 国が運営する公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類で、現役世代が納める保険料を受給世代に配分する仕送り方式になっている。国民年金は20歳以上の全ての人が加入し、公務員や会社員が対象となる厚生年金は国民年金の上乗せ部分にあたる。2016年度の国民年金保険料は月約1万6000円、受け取れる年金は満額で月約6万5000円。昨年の臨時国会では、現役世代の賃金が下がった場合は、年金も必ず減額する新ルールを盛り込んだ年金制度改革法が成立した。

 

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