中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし・健康 > 暮らし一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

糖尿病 重症化を防げ!

2009年11月22日

写真

 糖尿病がじわじわと増えている。糖尿病の患者かその予備軍は最新の国民健康・栄養調査によると二千二百万人以上に達するという推計もある。単純計算でほぼ国民の五人に一人、まさに国民病といえよう。

 自覚症状が少ないため、糖尿病と気付いたときは失明などの合併症を併発して手遅れのケースも目にする。どうすれば糖尿病を予防できるのか。その治療法はどこまで進んでいるのか。十一月は糖尿病月間。これを契機に糖尿病の現状を探った。

 糖尿病患者の増加を示すデータがある。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、一九九〇年には糖尿病が強く疑われる人が四百九万人、糖尿病の可能性が否定できない糖尿病予備軍が三百六十六万人と合計七百七十五万人だったのが、二〇〇七年には糖尿病が強く疑われる人が八百九十万人、糖尿病予備軍が千三百二十万人と計二千二百十万人に達した。二十年足らずで三倍近くに増えた勘定だ。

 なぜこのように増加したのだろうか。糖尿病の専門医は、過食や運動不足などライフスタイルの変化を挙げる。さらに見逃せないのは高齢化の進行だ。糖尿病が強く疑われる人の増加は十年ほど前は年間十万人程度だったのが、最近では年間七十万人以上と増加のペースが著しい。予防対策と治療は社会的にも急務になっている。

 糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの作用不足によって慢性の高血糖状態が続く状態。やがてさまざまな合併症を起こしてしまう。

 その糖尿病の90%以上を占めているのが2型糖尿病。遺伝的な素因と過食や運動不足などの生活習慣によって発症する。インスリンの分泌低下のほか、インスリンが分泌されているのにインスリンが効かなくなるケースでも起こる。

 もう一つ忘れてならない点に、日本人の遺伝的体質がある。日本人のインスリン分泌能力は欧米人の半分ほどしかなく、わずかな過食や運動不足でも、習慣になると容易に糖尿病を発症してしまうらしいのだ。

 日本人の肥満は米国人に比べてはるかに軽度であるにもかかわらず、糖尿病の発症率が米国並みという事実が、糖尿病になりやすい日本人の体質をよく示しているのは間違いない。

 糖尿病が厄介なのは、かなり病状が進行しないと、のどや口の渇き、体重減少、疲れやすいなどの自覚症状が現れないという点。合併症が出てから、ようやく糖尿病と診断されることも珍しくない。

 合併症は血糖値が高い状態が慢性的に続くため、全身の細い血管が傷ついて起こる。糖尿病網膜症と糖尿病腎症、糖尿病神経障害が三大合併症だ。

 網膜の血管が傷つき、眼底出血を繰り返しながら視力が低下してしまうのが糖尿病網膜症。腎症は腎臓の血管が傷つき、腎臓の機能が低下する。神経障害は知覚神経の障害に伴って、手足のしびれや痛みなどを起こす。

 網膜症は成人の失明原因の第二位、腎症は人工透析になる原因の43%を占め、第一位だ。神経障害は進行すると、足の組織が腐る壊疽(えそ)になって足を切断しなくてはならなくなるようなケースも起こる。

 こうした重症例が目立つのに、意外と治療を受けていないケースが多い。〇七年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人のうち、治療を受けているのはおよそ55%にすぎない。

 このため手遅れのケースも多く、糖尿病と診断された人のうち網膜症や腎症、神経障害がある人がいずれも10%を超えているのが現状だ。

 こうならないためには早期発見、治療が欠かせない。

進歩する治療 インスリン分泌を保たせる

 糖尿病に関連してインクレチンというホルモンが注目を集めている。血糖値が高いときはインスリン分泌を促進する一方、血糖値が低いときはあまり作用しないという特徴を持つ。このインクレチンの効果を持続させて糖尿病を治療しようという新しいタイプの糖尿病治療薬が承認され、近く登場する。

 インクレチンは炭水化物や脂質を摂取した後に腸から分泌されるホルモンの総称。代表的なインクレチンとしてGLP−1とGIPの二種類が知られている。

 GLP−1は、主に小腸下部から分泌され、膵臓におけるインスリン分泌の促進と血糖値を上げるグルカゴン分泌の抑制をする作用を持っている。GIPは小腸上部から分泌され、同じような作用を持つが、インスリン分泌作用はGLP−1の方が数倍強いとされている。

 インクレチンは、体内で「DPP−4」という酵素によってすぐに分解されてしまうため、効果が長続きしなかった。そこで登場したのが「DPP−4阻害薬」。DPP−4の作用を阻害してインクレチンの効果を長続きさせる仕組みだ。

 米メルク社が開発した「ジャヌビア」(一般名、シタグリプチンリン酸塩水和物)は、DPP−4阻害薬として現在は世界八十五カ国以上で承認され、米国だけでも千六百万人以上の患者に処方されている。

 日本では二〇〇三年から2型糖尿病患者を対象にした臨床試験を実施。この十月に2型糖尿病治療薬として製造販売が承認された。日ごろの血糖値レベルを表すヘモグロビンA1cの値を低下させる効果が確認されている。

 治療薬には現在、インスリンのほかに(1)インスリン抵抗性改善薬(2)インスリン分泌促進薬(3)食後高血糖改善薬−などがある。新しい作用機序を持っている経口糖尿病治療薬の登場によって「食後や空腹時の血糖値がコントロールしやすくなり、治療の選択肢が増える」と期待を集めている。

 

この記事を印刷する

広告
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ