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中日懇話会

第518回 中東緊迫 穏便な外交を 千葉大・酒井教授講演

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 第518回中日懇話会(中日新聞社主宰)が25日、名古屋市内のホテルであり、「9・11後の現代史」などの著書がある国際政治学者で千葉大法政経学部教授の酒井啓子氏(59)が「『イスラム国』(IS)以降の中東の動乱を読み解く」と題して話した。酒井氏は、ISの衰退で生まれた政治的空白を巡って中東情勢が緊迫している構図を解説し、「中東にエネルギーの多くを頼る日本には、関係を穏便に保つ外交政策をとることが期待される」と各国のバランスに配慮した外交の重要性を指摘した。講演要旨は次の通り。

 【IS後の混乱】中東は、諸悪の根源と言われたISがいなくなって明るい未来に進むかと思ったら、むしろ権力闘争が激化した。ISとの戦いで活躍したクルド人たちは、イラク北部の自治政府が独立を試みたが中央政府の圧力で断念した。シリアで自治地域をつくろうとした動きには、国境を接するトルコが強く反発した。一方で、イラク、シリアと同じシーア派政権で友好関係にあるイランは準軍事組織を紛争地帯に派遣し、軍事的存在感を増している。イスラエルがシリアの軍事基地を攻撃した際、犠牲者にイランの軍事顧問がいた。

 【米国の関与】米トランプ政権はオバマ前政権の政策をひっくり返すのが方針のようだが、長期的ビジョンが分からない。イスラエルの米国大使館の移転がなぜ問題かといえば、イスラエルが東エルサレムを一方的に首都だと宣言したという国際法違反に目をつぶることになるからだ。それでも米国がイスラエルを応援する背景には、イランの脅威を押しとどめたい意図があるのではないか。イラン核合意を結んだオバマ政権はISとの戦いを進める上でイランを重視して接近したが、トランプ氏はそれがイランを増長させたと考えて離脱した。歴史上、両国が対立するのは珍しくなく、関係改善の方がまれだ。

 【イランとサウジアラビア】両国は2003年ごろから軍事費を急増させた。同年のイラク戦争で、両国間の緩衝材だったフセイン政権が崩壊したからだ。シリアやイエメンの内戦は、両国の代理戦争の様相を見せた。現在は米国、イスラエル、サウジの3国のタッグができ、それに対しイランが対立する構造になった。直接対決が起きるのか、それとも止められるのかが、今後の注目点だ。

 

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