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中日懇話会

第499回 英労働者 EUにそっぽ 遠藤・北大教授が講演

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 第499回中日懇話会(中日新聞社主宰)が12日、名古屋市内のホテルであった。北海道大の遠藤乾(けん)教授(50)が「英国の欧州連合(EU)離脱の背景〜顧みられない先進国労働者のいらだち」と題して講演。離脱派が勝利した6月の英国民投票について「移民の流入、根強い主権意識に加え、社会のグローバル化で高まる労働者の不満が結果に表れた。英国が抜ければEUの力は確実にそがれる」と話した。

 講演要旨は次の通り。

 【投票行動】

 英国民投票は残留支持の得票率48%を離脱支持の52%が上回った。投票率は最近の総選挙を大きく上回る72%。政治に不満を持った人が行動する熱の入った投票になったと言える。

 イングランドは離脱、スコットランドは残留と地域ごとだけでなく、年齢や階層など属性ごとにも票が割れた。例えば24歳以下の若者は残留を志向したが65歳以上は離脱を支持した。若い人は幼いころから学校に移民の友だちがいて異論が少ない一方、大英帝国への郷愁もある年配の世代は「EUなんてなくてもやっていける」という思いがあった。教育水準が低い層も6割強が離脱だったが高学歴層は圧倒的に残留を志向した。読む新聞の好みでも投票に違いが出た。

 【離脱派勝利の要因】

 有権者への調査で、英国の最も重要な課題は2010年は経済だったが15年には移民になった。病院で主治医に会えない、公共住宅に入れないなど地方の生活に影響が出ており、移民の流入を制御できれば雇用や給料も含め生活を改善できると離脱派は訴えた。EUのルールが英国を縛る現状に主権意識の高い保守党の支持者も動かされた。

 駄目押しとなったのは労働者がEUにそっぽを向いたこと。グローバル化が進んだ1980年代後半以降、中国など新興国や限られた富裕層と比較し、先進国の中間層の実質所得は伸び悩んだ。「自分たちは敗者」という意識が広がり、本来はグローバル化に対抗する枠組みであるEUを批判の対象と見てしまった。

 【英国とEUその後】

 新たに発足したメイ内閣は投票結果を尊重する方針のため政治危機に陥る可能性は低い。スコットランドの独立の動きも注目されるが、法律の制約や財政面の厳しさから簡単ではない。

 EUの方が影響は大きい。英国が離脱するとEUは人口で12%、国内総生産(GDP)で16%、国別負担金で10%がなくなり全体の威信、権力の喪失につながる。難民問題やテロ、金融危機などが連動し極右政党が伸長するとEUは立ち行かなくなる恐れもある。来年のフランス大統領選、ドイツ総選挙が注目されるがEU崩壊につながる可能性は当面は薄い。

 

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