「どんな物(もの)にも便利(べんり)さと危険性(せい)があります」と話すのは子どもの危険回避(ひ)研究所(けんきゅうじょ)(東京(とうきょう))の横矢(よこや)真理(まり)所長。例(たと)えば、自転(てん)車の空気入れを使っていたら、外れた部(ぶ)品に指(ゆび)が挟(はさ)まり切断(だん)した。サンダルがエスカレーターに巻(ま)き込(こ)まれ、足の指を骨折(こっせつ)し、つめもはがれた。野ざらしにされていた消火器(き)が暴発(ぼうはつ)して頭を直撃(げき)し、意識不(いしきふ)明の大けがを負(お)った、など。身近な製品で子供が体を傷(いた)めた事故です。横矢さんは「身近な物で注(ちゅう)意することについて家族(ぞく)や友達(だち)と話し合うといいでしょう」と、呼(よ)び掛(か)けます。
家の中にも危険はたくさん。ポリ袋(ぶくろ)は床(ゆか)に置(お)いてあると足を滑(すべ)らせる可能(かのう)性があります。ガラスのコップは落(お)とすと割(わ)れたり、熱(あつ)い中身でやけどすることも。考えつかなくても「弟や妹、下級(きゅう)生たちを守(まも)るつもりで探(さが)すと、気付(づ)きやすくなりますよ」と横矢さん。
大人も見落としがちなポイントでは、束(たば)ねた電気コードから火が出たり、油(あぶら)やほこりが積(つ)もったガスこんろが原因(いん)で火事になったりすることも。正しい使い方やきちんとした管(かん)理が事故防(ぼう)止に重要(じゅうよう)です。「危ないかなと思ったら大人に伝(つた)えて」。みんなの見方が役(やく)に立つこともあるのです。
実際(じっさい)に起(お)こった事故を科学的(てき)に調(しら)べ、身近に潜む危険の大きさも分かってきました。畑村(はたむら)創造(そうぞう)工学研究所(東京)の畑村(はたむら)洋太郎(ようたろう)代表(だいひょう)は、2008年に東京都(と)内の小学校で起きた死亡(しぼう)事故を調べました。当時6年生の男子が、屋(おく)上のアクリル樹脂(じゅし)製の天窓(まど)に乗(の)ると割(わ)れて、12メートル下に落ちた事故です。徹底(てってい)的な実験(けん)の結果(けっか)、天窓は乗っただけでは割れず、跳(と)びはねたことで割れたと分かりました。
人形を使った実験では、自転車が壁(かべ)にぶつかった勢(いきお)いで乗っている人の頭も壁を直撃することや、プールに倒(たお)れ込むときに首にかかる力など、命(いのち)にかかわることを明らかにしています。
畑村さんたちは子供向けに、身近な危険を教える絵本と歌、踊(おど)りを作り、無料(むりょう)で配(くば)っています。指を挟んだり、頭をぶつけたり、高いところから落ちたり。絵本には、痛(いた)みを想像(そうぞう)できるように、粘(ねん)土や割りばしを使った簡単(かんたん)な実験も載(の)せています。
「事故を避(さ)けるには、決(き)められたマニュアルを守ればいい、という考え方ではいけません」と畑村さん。「どこに、どういう危険があり、防(ふせ)ぐにはどうするのか、自分で判断(はんだん)できるようになるのが大事です」と、アドバイスしています。