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匠を訪ねて

[24]美川仏壇の蒔絵職 浜上 清治さん(66) 「総合芸術」守る

黒い漆を塗った板に金粉を散らす浜上さん=いずれも白山市美川和波町で

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鳥や花 今風の図案も

 黒い漆の塗られた木に、赤い漆で花の絵柄を描く。その漆が乾かないうちに、さっと金粉をちりばめる。白山市美川和波町の工房。浜上清治さん(66)は美川仏壇のベテラン蒔絵(まきえ)職だ。

 浜上さんの家系はさかのぼると、江戸時代後期には宮大工をしていた。その後仏壇の木地を作る職人が父の故正治さんまで三代続いた。しかし、仏壇作りも機械化が進み、「手作業では太刀打ちできない」と感じた浜上さんは、父と違う蒔絵の世界へ。高校を卒業してから白山市と金沢市の職人の下で修業し、二十代半ばに独立して工房を構えた。

 鉄くぎを使わずに部品を組み立てるのが特徴の美川仏壇は、各職人が木地や金具を手仕事で作り上げる。浜上さんは扉や柱など一本の仏壇の二十数カ所に蒔絵を施す。それぞれの職人の技を合わせることから、浜上さんは美川仏壇を「総合芸術」だと言う。

 出来上がるまで蒔絵筆や漆用のはけなどの道具を使い、塗っては乾かしを繰り返す。「漆の乾き具合を見るのが大変。湿度や温度を見ながらやらないと」と苦労を語る。

仏壇の扉に描かれた鮮やかな蒔絵

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 手間暇かけた浜上さんの蒔絵は、地の黒に金が鮮やかに映える。完成した仏壇を納品して、お客さんに喜んでもらうのが何よりのやりがいだ。「金の輝いたところを見ると、やってよかったと思う」と顔をほころばせる。その仕事の評価は高く、二〇〇六年には県伝統工芸士の認定を受けた。

 真宗の盛んな土地らしく親鸞聖人の一生を描いた親鸞一代記など昔ながらの絵に加え、最近では鳥や花などの柄も描く。「時代が変わってきたのかな。昔のままの図案ではいけない」と話す。

 現在は機械化や海外から部品を輸入することで価格を抑えた仏壇も多いという。「一度壊してしまうと再生することは困難」と、職人の仕事と伝統文化の行く末を案じる。

 職人かたぎの浜上さんは「昔の職人の流れをくんでいるのに、自分が曲げるわけにはいかない。この伝統を守っていくのが使命」と考えている。

後記

 自ら「職人かたぎ」と語る浜上さん。蒔絵の「ま」の字も知らずに取材に行った記者は少し緊張していた。会ってみると、「職人やし、しゃべるのは苦手」とはにかむ。その顔に人となりを見た気がした。四十年かけて磨いた職人技。美しい金色に息をのんだ。美川仏壇を「総合芸術」と呼ぶのも納得できた。 (稲垣遥謹)

 

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