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匠を訪ねて

[23]料理人 中里知さん(50) 和食文化 極める

「本格的な加賀料理こそ、世界に誇れる和食文化だと思う」と語る中里さん=金沢市青草町で

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金沢で後継者を育成

 真剣なまなざしの先で包丁の刃がスーッと流れる。まな板には能登寒ぶりやタラ、カジキマグロ…。その手元に素材の味を引き出す意識が映る。繊細な盛り付けはまるで芸術作品のよう。

 「加賀料理にこそ、和食文化の魅力が集約されている」

 横浜市の出身。料理店を営む両親の影響もあり、高校卒業後、十八歳で調理師の道へ。修業を重ね、二十代半ばで石川県に来た。縁もゆかりもない土地だが、迷いはなかった。

 「日本海に囲まれている。山の幸も豊富。水がきれいで、米がうまい。地酒は上質で、九谷焼や輪島塗、山中漆器など伝統工芸の器がある。和食を極める条件がそろっている」

 金沢で暮らし、四半世紀。加賀料理の継承と普及、そして発展に傾注する。全国有数の七十年近い歴史がある調理研究の組織「越路会」の副理事長。専門学校で講師を任されるなど、後継者の育成でも責任ある立場だ。

季節感ある能登寒ぶりの治部煮(手前右)。加賀れんこんのはす蒸し(左)には菜の花、タラのこづけには梅の小枝を添える

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 和食文化の担い手として今、じっとしていられない思いにかられる。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「和食 日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録。北陸新幹線金沢開業が迫る中、県は「食文化の魅力向上」を重点目標に掲げ、業界を後押しする。

 「願ってもないチャンスだと思う。国内外に『石川の食』を発信したい。必ず認めてもらえる自信がある」

 「金沢の台所」と呼ばれる近江町市場。その敷地にある「いちば館」に店を構える。地元産を優先し、伝統の味を尊重する。そして工夫を怠らない。治部煮は定番のカモ肉だけでなく、能登寒ぶりや能登牛、能登かきで応用。加賀れんこんのはす蒸しには菜の花を添える。タラのこづけには、つぼみが膨らんだ梅の小枝を一本。きめ細かに使い分ける器が季節を彩る。

 「地産地消」を大切にする。その土地の旬の産物を、その土地で受け継がれる調理法で食べる「土産土法」という言葉も、金沢にはぴったりだと思う。「加賀料理は日本が誇る食文化。若い世代に伝えていく責任がある」

後記

 「北陸のAKBって、分かります?」。中里さんが問い掛けてきた。困った記者に「日本一ですよ」とヒントを出す。答えは甘エビ、カニ、ブリ。柔軟な発想力こそ、この料理人の魅力だ。取材後、注文した「海鮮ひつまぶし」。金箔(きんぱく)をちりばめたイクラに心躍った。「海の宝石箱ですよ」と中里さん。光るセンスも魅力だ。 (前口憲幸)

 

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