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匠を訪ねて

[22]兼六園専属庭師 志々目 均さん(45) 名園の顔手入れ

木の上方に登り、雪つりの縄を垂らす志々目さん

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雪つり 無心に男結び

 金沢市の兼六園で最も枝ぶりが立派とされる樹齢二百年の「唐崎松」。この季節、円すい状に張られた縄が幾何学模様をつくる雪つりが、来園者のため息を誘う。名園の風物詩を支えているのは、現場が兼六園一筋という専属の庭師だ。

 五人いる庭師の親方が志々目(ししめ)均さん(45)。

 最長十六メートルものアテの丸太を「芯柱(しんばしら)」として立て掛け、その上から八百本の縄を垂らして枝に結び付ける。十九歳で庭師に採用されて四半世紀。慣れたものかと思いきや、意外にも「毎年、一本目は怖い。先輩の職人も同じようなこと言ってたね」。ゴム手袋一枚で丸太に登り、能登産のわら縄を操る。風の冷たい冬は指がかじかみ、危険も増す。

 特別な作業ゆえの緊張感とともに、“優越感”を感じられるのも雪つりならでは。芯柱のてっぺんから望む卯辰山など、「五人だけの世界」が広がる。観光客から拍手で迎えられることもある。

雪つりが施された唐崎松=いずれも兼六園で

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 十一月一日に「唐崎松」から始まった作業は低木を含めて八百カ所に施され、今年は十二月十三日まで六週間にわたった。

 「手を動かしてる時はあれこれ考えとらん。他の手仕事と似た感じ。繰り返し繰り返し作るだけ」と笑う。はさみで小気味よく縄を切り、解けにくい「男結び」を素早く淡々と仕上げていく。

 尊敬する先輩、故・南他喜男さんに庭師としての心意気を教わった。「木の声が聞こえんけ? 『ここ切ってくれ』って言ってこんけ?」と聞かされた。雪つりでは芯柱の位置や枝選びに、剪定(せんてい)ではどの枝を生かすかに頭を悩ますが、ひたすら経験を重ね無心に手を動かす。「職人って、結局そこに行きつくんかな」と共感できるようになった。

 仕事は四季とともにあり、毎年成長する名木が相手。庭師の手が入ってこそ維持ができている自負もある。「これほど美しく歴史ある大名庭園で、ほかでできない手入れをさせてもらえる。庭師冥利(みょうり)に尽きるね」。園をめでる心が技を支える。

後記

 雪つりがされた唐崎松は間近で見ると迫力を感じ、遠くから見下ろすと縄は糸のように繊細だった。志々目さんの最も好きな季節は新緑。木のスケール感があふれ、広い園内と調和するという。

 季節や位置による変化と、そのすべてで保たれるバランス。厳しい作業の裏に、二つの贅沢(ぜいたく)が潜んでいる気がした。 (松本浩司)

 

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