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匠を訪ねて

[19]小松イ草農家 宮本隆史さん(54) 栽培北限 最後の一軒

イグサに傷がないか確認する宮本さん=小松市白江町で軽海町の生活アート工房で

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青の輝き 守る勘

 昔は価格が高騰したことから、青いダイヤとも呼ばれた小松イ草。冬のこの時期、作業場では青々と光沢を放つ太さ一ミリ前後の茎一本、一本に傷がないかを確かめ、畳表を織る作業が続く。

 「雪国育ちの小松イ草は堅い分、折れやすい。繊細でさ」。栽培地の北限、小松市で唯一の栽培農家となった四代目の宮本隆史さん(54)=白江町=は、せわしなく指を動かし使えないイグサをより分ける。

 二十二歳でこの世界に入った。父親の仕事を手伝いながら、栽培方法などを学んだ。栽培は自然に左右されやすいが、刈り取り後は、長年培ってきた経験や勘がものをいう。

 夏に刈り取ったイグサは、泥にくぐらせる「泥染め」をし、乾燥させることで、葉緑素の分解を抑え、変色を防ぐ。農閑期のこの時期まで保管しておく。

小松イ草の用途拡大に向けて製作された椅子(手前)や畳ベッド(奥)=小松市

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 乾燥させたイグサは織る前に、水分をいったん含ませた状態に戻す必要がある。織るときに、乾燥していると折れやすいが、一方で水分を含みすぎると黒く変色してしまう。

 「毎日の天候や湿度に応じて、イグサに霧吹きし調整する」のだという。色焼けやまだら模様ができないように、神経を集中させる。一枚の畳表には五千本以上のイグサを織り込む。来年三月ごろまでに二千枚前後の畳表を作る予定だ。

 最盛期の一九五〇年代には市内に千四百軒あったイグサ農家は、住宅の洋室化や材料の輸入などが増えて、二年前ついに一軒になった。「栽培期間は二年間。肥料は水稲の五倍。手間暇は四倍もかかるから」。最近の消費者は、見た目にも敏感だ。色や堅さ、耐光性などが市場価値を決める。

 小松イ草の普及拡大とブランド化に向けて昨年、宮本さんや家具職人、デザイナーらがスクラムを組み、「小松イ草拡大プロジェクト」を立ち上げた。小松イ草を使った畳ベッドや折り畳み椅子など用途を拡大させ、都内を中心に人気を広げている。

 宮本さんは「小松イ草にもっと関心を持ってもらいたい。絶やすことはできません」と力強く語った。 (井上真典)

後記

 取材するまで、水稲と同じような栽培方法や刈り取り方だと思っていたが、まったく異なっていた。夏にも取材させてもらっていたが、傷がつかないように朝露の残っている早朝に、水をかけてから機械で刈り取るなど気を配っていた。しかも栽培期間は二年。繊細な農作物で、根気のいる作業だと感じた。

 

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