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匠を訪ねて

[18]写真家 渋谷利雄さん(77) 能登の「朱」見せる

渋谷さんが撮影した能登の三朱の一部=羽咋市島出町で

写真

キリコ、夕日、キリシマ

 「能登の三朱」を撮影して五十年余り。羽咋市島出町の写真家渋谷利雄さん(77)は、能登を彩る朱色に魅了されてきた。祭りのキリコであり、外浦に沈む夕日であり、五月ごろに真っ赤に咲くのとキリシマツツジだ。

 人は「祭りの渋谷」という。大阪の写真専門学校を出て、写真店を営む傍ら、羽咋周辺で盛んな獅子舞の写真を撮り始めた。一九六〇年代後半、珠洲・蛸島で初めて見たキリコの魅力に取りつかれた。漆が塗られ、金箔(きんぱく)が施され、何とも鮮やかだった。

 「キリコ祭りだけで百カ所以上は行っとる」。写真集も出版した。中でも宇出津のあばれ祭(能登町)や石崎奉燈祭(七尾市)、寺家大祭(珠洲市)は、毎年欠かさず出かける。「寺家大祭は明け方が面白い。朝日に染まり、海に映る姿がいい」

 キリコ祭りに出かける道すがら、夕日の撮影もしてきた。輪島市曽々木海岸の窓岩の夕日のお気に入り写真は、タペストリーにした。窓岩から夕日がのぞいているカットだ。波がひいた砂浜が金色に染まっている。「海が荒れた後じゃないと駄目。年に何回しかない」。夕日だけでも百カ所以上で撮影した。

 特に近年、力を入れているのは、のとキリシマツツジだ。珠洲市の大谷で県天然記念物の花と出合い、夢中で撮るようになった。花の由来を求め、南九州へ自生のキリシマツツジを見にも出かけた。「時間帯や天候を考慮し、実物よりもいかにきれいに見せるかを考えている」と話す。

夕日の撮影に訪れた渋谷さん=羽咋市の千里浜海岸で

写真

 三朱の中で、キリコ祭りが減少しているのが気掛かりだ。「祭りが消えていっている。キリコ祭りだけでも四分の一はなくなっとる」。過疎化による人手不足が原因だ。担いでいたキリコを車輪を付けて押すようになり、やがてキリコを出さなくなる。

 「祭りを維持していくのは大変。能登から小さな祭りが消え、大きな祭りしか残っていかないかもしれない」。将来の話に及んだ時、渋谷さんの表情が曇った。

後記

 本紙の写真について聞いてみると、「記事の狙いにあったものを撮っとる」と一応の評価をいただいた。「五十年余り、撮影しとるけど、それでも能登は広すぎる。羽咋辺りでもまだまだ面白いものはある」と渋谷さん。話を聞いていて、さらに魅力的な話題や写真を探そうという気にさせられた。 (島崎勝弘)

 

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