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匠を訪ねて

[15]造林業 尾田則男さん(54)  世代つなぎ半世紀丹精

スギの枝打ちをする尾田さん=いずれも白山市白峰で

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山愛し木に息吹

 青空に向かって真っすぐ伸びる。雪の重みに耐えかねて、根元から折れ曲がる。クマに樹皮をはがされることもある。福井県境の白山市白峰の山の中。尾田則男さん(54)=白峰=は、スギの幹のひだに触れて言う。「同じように育てても、人と同じで一本一本違う」

 毎年、雪解けを待って五月の連休明けから本格的に山に入る。部下と三、四人で連れ立って行く。今でこそ現場近くまで車で向かうが、昔は雑草を払って道を作りながら一時間近く歩くこともざらだった。傾斜三五度の斜面にも登る。

 県の保安林の保育事業を引き受け、民間企業の環境活動をサポートする。尾根先かそれとも斜面か平地か。日当たりはどうか。風は吹きつけるか。さまざまな条件を考えながら、背丈五十センチほどのスギの苗木を植える。最近はブナやミズナラも植える。下草を刈る。幹に絡み付いたつるを払う。間伐する。

 四メートル近い雪が積もる白峰の山では、木々の成長はゆっくりで、スギの場合、植栽から伐採までに六十年かかる。子や孫の世代になってようやくだ。その分、年輪の目が細かく強度はある。工業用の合板や柱材になる。

尾田さんたちが育てたスギの丸太

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 尾田さんが樹高六メートルのスギの前で立ち止まった。腰に下げていたなたを、地上から一・五メートルの高さにある枝の付け根に当てる。最も重要な作業の一つ、枝打ちだ。節が残らないよう切り落とす。「タイミングを間違うと成長が止まってしまう。切り方が悪いとそこから腐ってしまう」

 七人きょうだいの三番目。山の中で炭焼きや焼き畑をしながら生活する「出作り」の家庭で育った。四キロ先の学校に徒歩で一時間かけて通った。植林する父を手伝い、スギの苗木百本をこもに巻いて背負って山越えをしたこともある。

 中学を出てナメコ栽培の仕事に就いたが、三十歳を前に林業の世界へ。危険と隣り合わせだが、休み時間に自分の山でアケビをもぎ、キノコを探すのが何よりの息抜きになる。山仕事は生きることそのものだ。

後記

 遠くから眺めると、とんがって同じように見えるスギの木も、足元まで行くとそれぞれまるで違う。クマのほか、カモシカが幹を傷つけた跡も。尾田さんは、困ったような顔を浮かべながらも、動物たちのことをどこか憎めない様子。若木たちを前に、数十年先の立派な森を思い描くと、ワクワクした。 (谷知佳)

 

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