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匠を訪ねて

[14]鬼瓦職人 大橋弘笑さん(82) 100年先 息づく技

金べらで土を削って鬼瓦に装飾を施す大橋さん=小松市矢田野町で

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土は繊細 感覚が頼り

 JR小松駅西側の旧市街地。歴史ある寺社が立ち並び、屋根には小松瓦がつややかに輝く。堂々とそびえる鬼瓦の多くは、現在県内に二人という鬼瓦職人大橋弘笑(こうしょう)(本名・弘一(こういち))さん(82)=小松市矢田野町=の作品だ。

 材料の土は繊細で、わずかな亀裂でも乾燥したときや焼くときに割れてしまう。「鬼師」と呼ばれる職人の感覚が頼り。デザインから重さ三十キロの土の塊を運ぶ力仕事まで幅広い。大橋さんは「一から考えて作るのが魅力」と奥深さを話す。

 雲や水、炎をデザインして型紙に描く。こねた土を盛り、金べらで削って形にする。二、三カ月で一作品を仕上げ、市内の窯元で焼いて完成。瓦職人だった父に十五歳から基礎をたたき込まれ「土の良しあしが分かるようになった」と振り返る。

 より芸術的な鬼瓦作りに魅せられ、能美市の鬼瓦職人故山田答笑(とうしょう)(本名・政雄)さんに弟子入り。山田さんの指導も厳しかった。

 ある朝出勤すると、前日作った瓦に「×」と刻まれていた。近くの板に「炎は下がらない」と書いてあった。独自色を出すことに夢中になり、縁起物なのに端が下がったデザインになっていた。

 瓦ぶきの民家が減り、妻子を養うため三十歳で地元の大手建機メーカーに入社。機械設備業務に携わったが、鬼瓦への情熱は衰えず、定年後に再開した。

大橋さんが手がけた寺の鬼瓦。師匠の山田さんの物と交換した思い入れのある作品=小松市東町で

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 現在は注文の九割が寺社向け。復帰からこれまでに全国の寺社計百五十カ所以上を手掛けた。師匠が数十年前に作った鬼瓦と交換することもあり、年月の重みを感じる。

 自宅の工房で、弟子の森山茂笑(しげしょう)(本名・茂雄)さん(40)=小松市不動島町=と制作に打ち込む。森山さんは「繊細な仕事ぶりにはかなわない。生涯現役でいてほしい」と願い、率先して力仕事を担う。

 作品は数十年、百年先も鬼師の技を伝え、屋根の上から人々の喜びや悲しみを見守り続ける。

後記

 大手メーカーの仕事の進め方が生かされているかを大橋さんに尋ねると「鬼瓦作りは別物」。手本なしのデザイン画に感性が光る。一方、森山さんは自由な発想で生け花や看板などに小松瓦を取り入れている。師弟に共通するのは、地元の伝統工芸を残したいという大目標。土に向き合う真剣なまなざしに、使命感がにじみ出ていた。 (白井春菜)

 

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