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匠を訪ねて

[11]ベースギター製作 坂口晋士さん(29)  音色、木目 刻む

外国産材を加工し、ベースギターなどの製作に励む坂口さん

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こだわり外国材丹念に

 車庫を使った工房。木を削るルーターなど工具が所狭しと並ぶ。その近くに楽器店でもなかなか目にすることができない木目が印象的なベースギター。ボディーの木目が斬新なギターもある。

 ギター形に削った木材の両面に木目がくっきり表れた外国産材を貼り、ネック部分を接着。削り方を誤り、美しい木目を損なうと商品価値は落ちる。製作を始めて十年近い坂口晋士さん(29)=七尾市つつじが浜=は、一本の楽器に集中しても、塗装して完成させるまでに二カ月半は必要と説明する。仕上げる過程で生き物の木は少しずつ反るなど不安定。堅く安定した素材になるのを待ちながら仕上げる必要があるためだ。

 七尾市生まれで物心ついた時は東京生活。中学時代に仲間と始めたバンドでギターやベースを弾いたが、高校卒業後は楽器製作にあこがれ、専門学校で技術を学んだ。東京でギター職人を目指したが、工具で木材を削る騒音に苦情が来るなど、工房スペースを確保するのも難しく、家族がいる七尾に戻り、製作を始めた。

 当初は趣味の延長だったが、知人から修理や製作依頼が舞い込み、これまでに十五本ほど製作した。音に直結する素材にこだわり、カナダのメープルやローズウッドなど数万円単位の外国産材を取り寄せる。楽器用に伐採後十年ほど乾燥させた外国材は安心して加工できる。一度だけ県産能登ヒバで製作したが、伐採間もない木は不安定で軟らかく、削るのは難しかったという。

坂口さんが理想の楽器として仕上げた2本のベース=いずれも七尾市つつじが浜で

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 理想の一本として仕上げたベースは、木に特定の菌などが入り込んだ時だけ表れる特殊な黒い木目模様が出るカナダの「スポルテッド・メープル」を使用。丁寧に作業を進めるため二年半かけた逸品で、販売価格は三十万円程度という。素材費、完成までの手間を考えると五十万円の価値があるが「そこまで引き上げると外国製ハンドメード楽器と同じ価格帯で、販売が難しくなる」と明かす。

 あこがれる米国のベース製作者ビニー・フォデラ氏らのように、楽器で生計を立てる夢は捨てきれない。素材や品質にこだわるほど価格を下げにくく、こだわりを捨てて製作したいとまで思わない難題と向き合う。

後記

 米国のロックバンド・メタリカが好きな坂口さん。激しい音楽性から想像できない柔和な表情で取材に応じてくれた。しかし、木目を生かして文字通り世界で唯一の楽器を仕上げる熱意から“ロック魂”を感じた。完成度にこだわるほど採算が取りにくい面がありそこにジレンマを抱える職人気質を見せられた。 (室木泰彦)

 

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