トップ > 石川 > 匠を訪ねて > 記事

ここから本文

匠を訪ねて

[4]九谷焼作家 苧野直樹さん(35) 白に白次代の器

うつわ工房すいかで作品づくりに励む苧野さん

写真

料理を盛り付け“完成”

 白を基調とする九谷焼を追求する。土を細く搾り出して表面に模様を付ける技法「イッチン」を駆使。白地に白い模様を描き、白の重なりの魅力を引き出している。加賀市の加賀九谷陶磁器協同組合の関係者たちからも「次世代を担う若手の一人」と期待をかけられている。

 最も心掛けるのは日常での使いやすさ。魚料理や肉料理、パスタ、サラダ…。料理を盛り付けた器を完成品ととらえ、それをイメージした上で作品に反映させる。「使い勝手がよければ器の出番が増える。作り手にとって、それが一番うれしい」と力を込める。

 能美市の九谷青窯で十年間修業した後、二〇〇九年に独立。昨年五月、加賀市片山津温泉に工房兼ギャラリー「うつわ工房すいか」を構えた。今年二月には伝統工芸士にも認定された。

白の魅力を引き出した苧野さんの作品=いずれも加賀市片山津温泉で

写真

 父は九谷焼作家苧野(あさの)憲夫さん(66)=加賀市野田町松ケ丘。間近で仕事を見てきたが、九谷焼を意識し始めたのは小学校高学年の時だった。出来の良しあしは窯を開けるまで分からない。だから「とにかく大変な仕事」と感じた。中学生になるとそのイメージが一層膨らんだ。バブル経済の当時、注文の多さに仕事が追い付かず、働きづめの父を見ていた。一方でものづくりは楽しそうに見え、ときには作品を作らせてもらって魅力を体感した。

 高校卒業後の進路をめぐり九谷焼の道に進みたいと相談した際、父は何も言わなかったが喜んでいるように映った。その後、曽祖父が九谷焼の絵付け師だったことを知り、選んだ道に運命を感じた。

 十年ほど前、白地に白い市松模様の浴衣を目にしたことが転機となった。「こんな表現方法があるのか」と衝撃を受け、作品に取り入れた。鮮やかな色が特徴の九谷焼とは対照的だが、人と異なる路線を極めようと決めた。「伝統的な九谷焼も作られた当初は斬新な作品だった。九谷焼は時代に合わせて進化していくものなんです」。強い信念を背景に、現代の九谷焼を表現し続ける。

後記

 「九谷焼は時代に合わせて変わっていくものです」。加賀九谷陶磁器協同組合の役員に話を聞いた際、苧野さんと同じ趣旨の言葉を耳にした。九谷焼と聞けば鮮やかな色しか思い浮かべられなかった固定観念を打ち砕かれた。

 九谷焼や山中漆器など伝統技術を生かしながら新たな作風を生み出す若手作家は多いという。米国など海外へのPRに努める若手もいる。苧野さんもその一人だ。若手の発想や行動力が伝統文化の盛り上げにつながることを期待したい。 (服部展和)

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索