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匠を訪ねて

[3]みそ職人 舟田勉さん(68) 日々 満点目指す

ベルトを流れるコメの温度を手で感じる舟田さん

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五感信じ こうじづくり

 立ち込める大量の蒸気。舟田商店(津幡町庄)で、いつものこうじづくりが始まった。

 七代目店主の舟田勉さん(68)が、蒸し上がったコメ三百キロをスコップで冷却機に運び、長さ約四メートルの電動ベルトに乗せる。流れるコメの中に右手を入れて温度を確かめては、冷却風の強さとベルトの速度を微調整する。コメがベルトを通る時間は一分足らず。だが「ここでの温度管理がこうじづくりの勝負どころ」。

 この後、こうじ菌を吹き付けて約二日間発酵させ、こうじが出来上がる。大豆、塩にこうじを混ぜて七カ月〜一年弱寝かせれば、みその完成だ。

 創業百五十一年。大学卒業後、二十四歳で父親から店を継いだ。師匠は家族同然に付き合ってきたベテラン従業員ら。県外の店の視察や研究会にも積極的に出掛けて研さんを積んだ。

全国から引き合いがある「美水」と「無添加味噌」。背景は築約100年という舟田商店=いずれも津幡町庄で

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 舟田さんが開発したみそ「美水(びすい)」は、まろやかさと甘みが特徴で、昭和天皇が来県した際に献上された。「伝統と独学の上に、今の自分がある」と話す。

 かつて家庭でみそを造ることは珍しくなかった。「みそ造りそのものは難しくない」という。「質の違いを生むのは、こうじ」が持論だ。

 舟田さんが心血を注ぐ温度管理は、こうじ菌の種類に加え、その日の気温や湿度が左右する。「手や目、五感を使って判断するが、思い通りにならないときもある」と明かす。

 それでも完全機械化で「金太郎あめ」のように同じみそを造ることを良しとはしない。

 「冷夏もあれば暖冬もある。年によって出来にわずかな違いはある。それが自然の摂理で、みそに地域性があるゆえん。お客さんにも理解してもらいたい」

 みそ店が次々に姿を消す中、生き残るための支えとなったのは、先達の教訓と伝統を守る使命感という。毎日のように全国から注文が入る。睡眠時間は一日四時間。この多忙な日々は苦しくない。「ものづくりに百点満点はない。でもいつも満点を目指している」

後記

 町家風の店は築百年ほど。県道拡幅工事で周囲の民家が取り壊される中、十メートルほどずらして再築した。店構えからして伝統の重みがにじむ。その長い歴史を守ってこられた秘策を尋ねると「ラッキーだった」と冗談めかしたが「運を呼び込むには、自ら行動しないといけない」とも。すべてに通ずる道理かと思う。 (高橋淳)

 

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