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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第2部 伝統】 行商 地域見守りつつ

なじみ客と話しながら商品を手渡す板谷いつ子さん=石川県輪島市河井町で

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輪島の「振り売り」

 石川県輪島市に伝わる行商文化「振り売り」。旬の魚から日常品まで地域に出向いて売り歩く姿は昔ながらの光景だ。江戸時代から続くとされる。高齢化が進む現代では、単なる商売ではなく、地域の見守り役としての役割も担っている。(関俊彦、写真も)

 「今日は何があるけ」「寒(さみ)なったなあ」。振り売りの中で最高齢で、四十年のキャリアがある板谷いつ子さん(74)=同市輪島崎町=が旬の魚を積んだリヤカーを止めると、常連客が口を開く。話題は、晩ご飯の献立から政治までさまざま。板谷さんは「みんなの顔を見てしゃべるのが楽しみ。このために続けている」と顔をほころばせる。

 振り売りの朝は早い。早朝、輪島港や地元の商店で水揚げされたばかりの魚介類を仕入れると、午前九時ごろの出発まで仕込みに追われる。各家庭ですぐ調理できるように、焼き魚やから揚げ用など多彩に準備するのは、各家庭の好みの味から家族構成まで頭に入れているからだ。

 板谷さんによると、市内では現在、二十人ほどがリヤカーや軽自動車などで各地を回る。担当する区域を決め、一人ひとりが各地域でより密着して活動する。

 同市門前町地区で振り売りをする南谷良枝さん(43)=同市気勝平町=は三年前の夏、いつも顔をのぞかせる常連さんが来ないことを不審に思い、家を訪問。屋内で熱中症で倒れていた九十代女性の命を救った。

 地元の輪島署は今秋、振り売りをする行商に「輪島振り売り子供みまもり隊」を委嘱。地域に深く溶け込む振り売りは、今や行政や警察にも頼られる地域を知り尽くしたスペシャリストとして認められている。

 振り売り歴二十年の新木小百合さん(49)=同市輪島崎町=は「一人暮らしのお年寄りも増えている。高齢化社会の現代こそ、振り売りはいなくなってはならない存在と思う」と語る。

 振り売り自身の高齢化も進み、平均年齢は六十歳を超える。早朝からの仕事やリヤカーを押す体力が無くなり、廃業する振り売りも少なくない。板谷さんも「体力も限界に近い。もう数年で潮時かも」ともらす。

 それでも「いつもありがとう」というなじみ客たちの言葉が原動力に変わる。板谷さんは言う。「頼られることはこれ以上ない喜び。みんなとしゃべると、体力の続く限りは続けないとって思います」

石川テレビで今夕特集

 北陸中日新聞は石川テレビ放送と「守る」という言葉をもとに取材し、共同報道企画「守る」を隔週で、連載しています。石川テレビの特集は29日午後6時25分ごろからの「石川さんプライムニュース」で放送します。

 

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