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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

使われるからこそ 美しく 能面師・後藤祐自さんに聞く

能面の型紙を手に取る後藤さん=金沢市田上町で

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 人の顔って無数にありますよね。能面もそう。完全な左右対称ではなく、目の位置などを微妙に変えていることで、雰囲気も変わる。そこが面白い。

 京都に住んでいた小学生のとき、近所に仏師と日本画家がいて、よく遊びに行きました。作品が欲しかったけれど、お金はないから、自分で作ろうと。そうして絵を描いたのをきっかけに、日本画家を目指すことにしました。

 金沢美術工芸大に進学し、地元に帰って美術教諭をしながら絵を描いていましたが、次第に日本画家として限界を感じるようになりました。そんなとき、能面を思い出したんです。

 高校時代に日本画を学んでいたとき、兵庫県にある能楽資料館で、能面をよく見ていました。父が大工だったので、のみを借りて試しに彫ってみました。

 仏像と比べて、顔だけだから楽かなと思っていたのですが、全体で感じる雰囲気を顔に集約するのは大変でした。彫るだけでなく、ひげに見立てた馬の毛を付けたり、牙の形の金具をはめこんだりする作業もあるんです。

 能面は清楚(せいそ)で気高い表情が素晴らしい。のめり込んで、教職を辞めることを決めました。能面師になって三、四年すると、修復の依頼が舞い込み、まるで能面が寄ってくるようで、ますますのめり込みました。

 数百年前の能面を再現するように作ります。まず、正確に採寸し、厚紙で型を取る。ほんのちょっと形が違うだけで、能の舞台で声を出す際の、「謡いの響き」が変わってしまいますから。

 ただ、同じ形のものを作るだけではなく、能面の雰囲気をそのまま写し取ってこそ、本当の能面師だと思います。昔の能面を超える物を作ろうとは思っていません。何百年も使い込まれて美しくなった能面を、新作が追い越すのは無理だからです。絵画のように飾る美もありますが、能面は使われるから美しくなる。

 今、息子の尚志(24)が自分の下で、能面師になる修業をしています。いいものを伝えていきたいと思います。 (堀井聡子)

 ごとう・ゆうじ 1955年、京都市生まれ。金沢美術工芸大卒。27歳で能面師となり、現在は主に宝生流の能面づくりと修復をする。

 

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