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「守る」北陸中日・石川テレビ共同企画

【第2部 伝統】能面師 連綿 色も 傷も 雰囲気も

ヒノキを彫り、能面を作る後藤祐自さん=金沢市田上町で(堀井聡子撮影)

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 数百年前に作られた能面を型取り、色合いの変化や傷もそっくり同じに再現する。それが、能面師の後藤祐自(ゆうじ)さん(63)=金沢市田上町=の仕事だ。「ただ、同じ形を作るのではなく、能面が持つ雰囲気を写し取る」。江戸時代、加賀藩が守り育てた能楽に欠かせない能面師になって三十五年。これまでに三百近い面を作ってきた。(堀井聡子)

 「コン、ココン」。木曽ヒノキにのみを打つ音が作業場に響く。手つきに迷いは見られない。作業初日、角材から目鼻が付いた大まかな形を削り出す。「大変なのはそこから」だ。

 「幅が一ミリ違うだけで、全く雰囲気が変わってしまう」。型紙を当て削り、また当てて削る。その繰り返し。削り終えたら、岩絵の具で顔を描き、裏面には漆を塗る。ほかの面の修復も手掛けるため、一つが完成するまでに一カ月かかる。

 傷みの激しい古い面は舞台で使えないため、新しい面が必要になる。風合いはそのままがいいから、傷や色の変化も忠実に再現する。金沢の舞台で使われる新しい面のほとんどは、後藤さんが手掛けたものだ。

 日本画家を目指し金沢美術工芸大に進学。卒業後は故郷の京都市に戻り、中学の美術教諭をしながら絵を描き続け、二十六歳の時、能面を題材に絵を描いた。そのときに鑑賞した舞台で面のまぶたが動いているように見えたという。「いろんな表情に見せるため、あえて顔を決めないように作られている。こんな世界があるのか」

 独学で作り始めてのめり込み二十七歳の時、教職を辞めた。金沢に移り住み、室町時代以降に作られた能面を借り出し、ひたすら同じように作る。仏像やひな人形を作り糊口(ここう)をしのぎ、能面師として腕を磨いた。

 一流になった今も思う。「昔の職人が作った能面は最高です。見ているのが嫌になるくらい」。そして、能面は成長するところがいい。「使い込まれるからこそ、味が出て美しい。傷があることで顔が優しく見えたり、すごみを感じたり。一級品の芸術品ですよ」

 能楽への関心は現代では薄れているが、後藤さんは関心を少しでも高めようと、石川県内で四カ所、東京、京都で教室を開き、自らの技を伝えている。

 「文化は、庭の飛び石のように、伝統を継ぐ人がぽつぽつと出て、つながっていくのだと思います。僕はその飛び石になりたい」

石川テレビで今夕特集

 北陸中日新聞は石川テレビ放送と「守る」という言葉をもとに取材し、共同報道企画「守る」を隔週で、連載しています。今回から第2部「伝統編」です。石川テレビの特集は「石川さんプライムニュース」で、12日午後6時25分ごろから放送し、後藤祐自さんのインタビューを後日、金沢版で掲載します。

 

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