【シリーズ現場】知事ぶら下がり 不都合なら拒否 識者批判「どう答えるかに意義」
定例会見否定の根拠のはずがほとんどの都道府県知事の記者会見が月一回以上行われている中、谷本正憲知事は、議会開会中などにぶら下がり取材に応じていることを理由に定例化を拒否する。「ぶら下がりの方が本音が出る。私なりのやり方で」と持論を繰り返す。情報発信のあり方が問われる今、ぶら下がりの実態と知事の主張、有識者の見方を報告する。(室木泰彦) 「希望に応じ」守られず■実 態 「ここでいいか」。県議会本会議を終え、議会庁舎から県庁へ通じる廊下で立ち止まる知事。報道陣が囲んで次々に質問する。場所が変わることもあるが、知事を囲んで立ちながらやりとりする形は毎回同じだ。 記者数人だけの時があれば、北朝鮮の脱北者が十三日に能登沖で発見された直後のようにテレビカメラが何台も囲むケースもある。側近職員や部局長らが見守り、知事が把握していない内容を助言する。 議会開会中以外でも、政局や災害発生などについて報道側が求めると、知事はぶら下がり取材を受ける。ただ「希望に応じている」と知事は強調するが、必ず応じているとは限らない。取材を申し込むと担当者が「これは難しい」と言われるケースがある。最近では、原発問題で本紙がコメントを求めたところ拒まれた。知事に都合が悪いと判断された場合は応じてもらえないケースもある。 ■主 張 三カ月に一回、県議会定例会前の予算案発表などで知事会見がある。知事らと対面して座る報道陣。知事は記者の質問に一つずつ答えていく。一時間以上続くこともある。 九月補正予算案を説明した八月三十一日の会見で知事は定例化を否定し「県政課題が浮き彫りになる議会開会中は午前、午後二回もぶら下がりに応じ、どんな質問も受ける。こんなに丁寧に応じる知事はあまりいない」と述べた。 だが、議会があるのは通常二、六、九、十二月だけ。議会ですべての課題が出尽くすわけではない。議会に関係なく、県民に伝えるべくトップの見解を聞きたい場面も多い。本紙の昨年の調べで、石川以外の全都道府県は月一回以上の知事会見を開いていた。 ■姿 勢 石川は知事会見のホームページ(HP)のあり方も問われている。文章と動画で公開しているが、どちらも冒頭の知事説明だけ。ほかの都道府県は、文章か動画で質疑応答も公開。石川は行政側の恣意(しい)的な内容になりかねない。 全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は、定例会見の意義を「答えたくないことも質問された行政のトップが、どう答えるかを住民が知ること。答え方、慌てぶりに真実があることが多い」と指摘。石川の現状について「いろいろ聞かれて仮面をはがされることを恐れる確信犯的な対応だと言われても仕方がない。行政が都合のいい内容だけ伝えるのは情報公開でなく宣伝だ」と話す。 ◇後記◇ 知事に八月の予算案発表の際、会見定例化を求めると「行事予定だけ発表して終わりじゃ意味ない」と突っぱねられた。知事は「定例会見やる代わりにぶら下がりは一切応じないのも選択肢だ」と制限付きも示唆した。 知事が記者とどう向き合うかではなく、県民にどう情報発信していくか姿勢の問題だと考えている。今後も会見の定例化とHPの質疑応答の公開を求めていくが、情報公開が進むほど報道側の資質も問われることを肝に銘じたい。 ◇ぶら下がり取材◇ 会見場や会議室などを使う記者会見と違い、要人などの対象者を報道陣が一緒に歩きながら、もしくは立ちながら囲んで質疑応答する取材方法。移動中の政治家などに短時間でコメントを求める場合などに有効とされるが、官邸で行われる首相のぶら下がり取材などは会見に準じる公式会見の意味合いも持つ。歴代首相によって対応は違うが、小泉純一郎氏や鳩山由紀夫氏は1日2回、菅直人氏は1日1回ぶら下がりに応じることが多かった。 PR情報
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