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石川

輪島塗 城下町で技磨く 漆芸作家 杉田明彦さん(40)

実家のある東京都文京区と金沢市の印象などを語る漆芸作家の杉田明彦さん=金沢市菊川で

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 さまざまな伝統文化が息づく金沢市で、しっとりと手になじむ輪島塗の器を作っている。漆芸作家、杉田明彦さん(40)=同市菊川=は東京都文京区出身。十二年前に輪島市へ移り、修業。五年前に金沢で工房を構えた。「金沢は工芸に対する目が温かい町。古い町の風景を残しながら細い道が通っているところは、少し文京区に似ている」

 実家は江戸時代から続く会津漆器の店。文京区には住宅街が広がり、古い家も軒を連ねるかと思えば、後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティアトラクションズ)に大学、オフィス街が入り交じる。街の表情の豊かさに趣深さを感じる。「散歩が好きで、中学生のときはよく東京大の赤門(旧加賀藩上屋敷の門)をくぐって、本郷の辺りをふらふらしていた」と懐かしむ。今は鈴木大拙館(金沢市本多町)近くの散策路がお気に入りだ。

 大学四年の時、役者を目指して中退したが、生活は厳しかった。手に職を付けようとそば打ち職人になる。独立できるほど上達した三年目。輪島塗の塗師、赤木明登(あきと)さんの作品を本で目にした。

 美術史を専攻していた大学時代、印籠など古い漆器が好きだった。中退後は「漆芸作家になりたい」との思いもあったが、「それだけで生活できない」からと選んだのがそば打ちだった。モダンで繊細な赤木さんの器のたたずまいに心打たれ、弟子入りを志願。二〇〇七年、二十八歳で輪島市へ引っ越した。

 一から技術を学び、ひたすら制作に没頭する日々。「次は自分らしい作品を作りたい」と六年後に独立し、さらに一年後の一四年、作品を発表する機会も多い金沢市へ移り住んだ。次第に作品が認められ、今ではパリのホテルにも展示されている。もちろん、実家の店でも器を販売している。

 「金沢は、江戸時代に加賀藩が職人を抱え、その後も商人たちが工芸を支えてきた。そういう地層が積み重なってきた町だと思う」

 最近、市内で築何百年もする武家屋敷を買った。年内には移り住む。「当たり前に古い物があるので、意外とその良さに気付いていない地元の人もいる。古くから続く物を大切にしたい」という思いがある。「金沢と文京区も、ただ近代化するのではなく、互いの良さを補い合いながら面白い町になってほしい」

 (堀井聡子)

 すぎた・あきひこ 1978年生まれ。学習院大哲学科を中退。輪島塗の漆器をはじめ、漆を使った平面作品なども手掛ける。金沢のほか、関東や関西でも個展やグループ展を開いている。東京都文京区の実家には年3、4回行き来している。

 

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