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石川

過疎の山里 活気再び 山中温泉・杉水にカフェや遊び場

 山深い加賀市山中温泉杉水(すぎのみず)町で、カフェや子どもの遊び場のオープンが相次いでいる。週末を中心に、散策を楽しむ若い世代の姿が見られ、子どもたちの歓声が響く。住民の減少で消滅の危機にあった集落が、自然の恵みを堪能できる、とっておきの場所に変わりつつある。(小室亜希子)

(上)自然あふれる山村でそば店を営む霜下照夫さん(左)と妻の順子さん(下)栗や葉ワサビなど山の恵みを用いたマフィンを提供する上出美恵さん=いずれも加賀市山中温泉杉水町で

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霜下さん旗振り役 若者、家族連れ集う

 杉水町は山中温泉の中心部から車で二十分ほどの山間部にある。赤瓦の屋根にいろりの煙出しがちょこんとのった伝統家屋が道路の両側に立ち並び、集落の中心を杉ノ水川が流れる。

 この小さな集落で、二〇一五年九月にマフィンのお店「MAGNOLI(マグノリ)」、昨年九月には子どもの遊び場「くるけ」がオープンした。豊かな自然やゆったりした時間を求め、市内外から人々が足を運ぶ。週末のイベント時には、大勢の家族連れや若者らでにぎわいを見せた。

 地域づくりの中心にいるのは杉水町出身で、そば店を営む霜下照夫さん(66)。中学生まで暮らしたが、生計の柱だった炭焼きが低迷し、家族で離れた。漆器塗装業をへて、四十歳すぎに「古里と家を守りたい」と戻ることを決断。そば打ちを習い、一九九五年に生家を改装して店を開いた。

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 霜下さんが子どものころに五十軒ほどあった民家は十軒に減り、ほとんどが空き家になっていた。「このままでは集落がなくなる」と危機感を抱いた杉水町を含む周辺四町の住民が、国の重要伝統的建造物群保存地区を目指して運動し、二〇一一年、「加賀東谷地区」として同保存地区に選定された。山村の風景や営みの価値が見つめ直される機会になった。

 二年後には霜下さんの長女、上出美恵さん(34)が市外から戻り、パティシエ経験を生かして、マフィンの店を始めた。蔵を改装したこぢんまりした店舗で「子どものころに通った楽しい思い出があるし、父母も頑張っている。お客さんにものんびりしてもらえる」とほほ笑む。

 ほかにも古民家の宿や資料館、自然体験の拠点施設が住民によって少しずつ整備され、人の流れが自然と生まれている。

 「夏は魚を手づかみで捕り、冬は竹スキーで遊んだ。父親たちが何度も漆を塗り重ねた家にも愛着がある」と霜下さん。「次の世代にバトンタッチせないかん」と課題を口にしつつ「楽しみながら、この里山を守ってくれれば」と新しい動きを見守っている。各店舗の営業は週末中心で、今期は十一月末まで。冬期(十二〜三月)は休業となる。

内装も遊具もすべて木で作られた「くるけ」で遊ぶ親子

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蔵改装の「くるけ」 手作り木の遊具 いっぱい

 昨年9月にオープンした子どもの遊び場「くるけ」。蔵を改装した、縦横各6メートルの小さな空間に足を踏み入れると、全て木でできたキッチンや滑り台、塔などの遊具に驚かされる。

 金沢市鞁筒(つづみどう)町の自宅ガレージで遊び場を運営する木工作家安西芳輝さん(34)が霜下さんの依頼を受けて、全て手作りで仕上げた。子どもの好奇心をかき立てる工夫が細部まで施され、まるで秘密基地のよう。外の川や森と行き来しながら遊ぶことができる。

 安西さんは「くるけをきっかけに、杉水町の全体を楽しんでほしい」と話している。

 

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