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蒔絵修業 台湾から 何静さん 山中漆器に感動、弟子に

蒔絵師に弟子入りし、修業を続ける台湾出身の何静さん=石川県加賀市山中温泉長谷田町で

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「デザインと融合、世界へ」

 石川県加賀市山中温泉の伝統工芸山中漆器の世界に台湾から単身で飛び込み、昨年四月から蒔絵(まきえ)師に弟子入りして修業を続ける若い女性がいる。台湾北部・基隆市出身の何静(ホーチン)さん(26)。美しい緻密さを持つ日本の蒔絵の技術を習得して台湾で学んできたデザインと融合させた作品を作り、世界へ発信したいと意気込んでいる。(古田秀陽)

 山中温泉長谷田町の工房。師匠の蒔絵師山崎夢舟さん(51)の隣に座り、何さんが余分な漆を耐水ペーパーで落とす「研ぎ」の作業に取り組む。研ぎ過ぎると、作品は最初からやり直し。「指先の感覚と研ぎの音」に神経を集中、細心の注意を払う。蒔絵筆で細い線を描いたり、金粉を均等にまいたりする作業はいずれも蒔絵の基本だが、「習得するには三年はかかる」と山崎さんは言う。「簡単な作業は一つもない」と、何さんは地道に修業を続ける。

 幼いころから絵が好きで、国立台湾科技大では工業デザインを専攻。卒業後、台湾の企業でパソコン周辺機器のデザインを担当した。だが、「商品を売るためのデザインではなく、日常生活の中で、美を伝えられる仕事がしたい」との思いが募っていったと言う。

 二〇一六年四月、さらに美術を学ぼうと、海外の大学院進学に挑戦したが失敗。進路に迷っていたその年の八月、台中市の豊原漆芸館で開かれた山中漆器のワークショップで、蒔絵を教えた山崎さんに出会った。

 「日本の蒔絵の精密さ、技術の複雑さに衝撃を受けた」。何さんは後日、インターネットで山崎さんの作品をさらに調べ、その緻密さに驚き「私がやりたいことだ」と強く思った。

 一週間かけて文案を練り、親類に日本語訳を付けてもらって、熱のこもった弟子入り志願の手紙を出した。「漆の技術を伝承し、多くの人々を漆の美しさで魅了したい」とつづった。

 弟子を取っていなかった山崎さんだが、熱意を認め、試しに何さんを昨年二月、山中温泉へ呼び寄せた。その時、習得中の日本語を話す何さんを見て「本気さとまじめさ、向上心が伝わった」と、一番弟子に受け入れることを決めた。

 昨年十月には、山中漆器連合協同組合主催の山中漆器蒔絵展に酒器を初出品し、入賞を果たした。「将来はデザインと漆のアートを融合した作品を作り、世界のどこへでも行って、個展などを開きたい」と、何さんは夢を語る。師匠の山崎さんも期待を寄せる。「デザイン力があり、中国語、英語、日本語を話す世界的芸術家になれる可能性があると思う」

 

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