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泣き笑い…自伝に人生の滋味 24時間営業食堂経営・小松の豊島さん

新作本を手に「私のすべてを書き記しました」と話す豊島宣一さん=石川県小松市のみなとや食堂で

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 石川県小松市で二十四時間営業の「みなとや食堂」を経営する豊島宣一さん(67)から「十一月に自伝を出版します。九月末には本が届きます」とメールをもらった。久々に店を訪ね、話を聞いた。(松瀬晴行)

 豊島さんは金沢市出身。金沢大付属小学校、同中学校、金沢泉丘高校卒。東大に進んだが八年間で卒業できず、両親が営んでいた大衆食堂を継いだ。

 本のタイトルは「セブラル・レヴァルーションズ/二十四時間食堂物語」。

 小学二年の時、徒歩で下校途中、便意をもよおし、もらしてしまった。その姿を路面電車に乗っていた級友に目撃され、教室で言いふらされた。女子児童は鼻をつまみ、冷たい視線を浴びせるようになった。

 トラウマから殻に閉じこもり、友達ができなかった。成績も悪かった。高学年になり、母に悩みを告げると「勉強ができれば友達もできる」と言われた。

 家は狭く、七人きょうだい。勉強ができる環境ではなかった。そこで帰宅すると部屋の片隅で寝て、深夜に起き、朝まで勉強した。そのスタイルを貫き、成績は上位を維持した。

 だが医学部受験に二度失敗。大きな挫折だった。東大理科2(ローマ数字の2)類に進むと、友人には一浪だとうそをついた。「プライドが高かったんやろね」と苦笑する。

 友人との人間関係に悩み、大学に行かなくなった。帰郷して大衆食堂を手伝うもののパチンコにのめり込み、生きる目的を見失った時期もあった。仕事は年中無休。調理、接客、仕入れもこなし、一日の労働は十八時間。婚期も逸した。

 学生時代から作家にあこがれていた。仕事の合間に小説を書き、これまでに二冊を出版。新作では客の人妻に対する禁断の恋心も書き記した。随所に両親への尊敬の念がにじむ。

 「若いときの悩みなんて今から思えばちっぽけなもの。人間はいろんな経験をして変わることができる」と豊島さん。セブラル・レヴァルーションズ(いくつかの革命)というタイトルにはそんな思いも込めた。

 「人生を赤裸々につづった。もう秘密は何一つない」と表情は晴れやか。「人が寝ている夜に勉強し、働く。それが私の宿命。体はきついけど、苦じゃないわ」と話す。

 店を一緒に切り盛りしてきた母章子さん(91)は昨秋、足をけがして、金沢市内の施設に入った。「小説の執筆はこれで一区切りや」と言うが、「文学賞を取って大金が入ったら、近くの空き家を買い取り、母を呼び戻して一緒に暮らす」と前向きだ。結婚もまだあきらめていない、という。

 【メモ】 新作は700円(税抜き)で、全国の200店舗で販売予定。(問)文芸社出版企画部03(5369)1960。豊島さんによると、出版費用は150万円。募金で寄せられた7万円と貯金3万円を頭金に2年ローンを組んだ。

 

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