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実証実験、確実な成果 永平寺町の自動運転

自動運転車の走行実験には地域住民も参加。地方の新たな交通システムとしての期待もかかる=永平寺町東古市で

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 国内外に知られる曹洞宗大本山永平寺を擁する永平寺町。豊かな自然に囲まれた町で、近未来を感じさせる新たな交通システムの実証実験が続けられている。高齢化、人口減少、財政難といった地方都市の課題を解消する交通システムとして、自動運転技術による電気自動車が駅や観光地を巡回。地域住民の移動手段や観光客の輸送手段として期待されるプロジェクトだ。

 国が進める自動走行研究の実証地域に永平寺町が選定され、町と県、国立研究開発法人・産業技術総合研究所(産総研)や民間企業が連携協力。旧京福電鉄永平寺線廃線跡の遊歩道「参ろーど」(約六キロ)を活用し、埋設した電磁誘導線を感知しながら無人の電動自動運転車「スマートEカート」が走行。二〇一七年春に着手し、二〇年以降の実用化に向けて実験を繰り返している。

 実験は車載センサーやカメラによる障害物感知や安全な停止、積雪時の走行などの検証を経て、今年四月には遠隔操作と監視システムによる無人走行を開始。安全確保のため保守要員が乗車するものの、運転は人工知能(AI)が担う部分が多い。

 さらに一人の遠隔操作者が二台同時に走らせる実験も始まるなど、自動走行車の実用化に向けて確実なステップアップを見せている。

 人口二万人に満たない町でなぜ、最先端の自動運転技術の開発が進められているのか。産総研は自動運転の実証を全国四カ所で実施し、永平寺町は「過疎地モデル」と位置付けている。加速する高齢化と人口減少による人手不足、厳しい財政での運用コスト削減。こうした課題を解決する交通システムは、地方を救う切り札として注目が集まる。

 河合永充町長は「町が協力することで自動運転技術の研究開発が加速し、交通弱者の新たな手段として実用化の全国第一号になれば」と期待を寄せる。

 今年十月下旬からは地域住民や観光客に無料開放。一日七往復計十四便が定時ダイヤで運行され、高齢者の通院や買い物、児童の登下校、大本山への参拝客など一カ月で七百人以上が乗車。「想定以上の利用」と関係者も手応えを感じている。

 自動運転は自動車メーカーや世界的IT企業も研究するハイレベルな技術だが、遠隔操作による車両制御は「完全自動運転」と定義されるレベルと同等の位置付け。産総研の加藤晋研究ラボ長は「自動運転の実証は地域や関係者の協力が不可欠。さらに実験を繰り返し、安全な自動走行を早期に確立していきたい」と意欲を見せる。

◆取材後記

 駅や観光地の停留所でスマートフォンを操作。自動運転車を呼び出し、無人の電気自動車が乗客を目的地まで送り届け、次の停留所へと向かう。近未来の交通手段は着実に進歩を続けており、過疎に悩む地方の足として期待がかかる。

 自動運転技術は交通弱者対策にとどまらず、高齢ドライバーの痛ましい事故減少にもつながる。自動運転の基礎技術、自動ブレーキを、政府は二〇二〇年には新車搭載率九割以上を目指すという。

 記者の次の車が自動運転とはいかないまでも、自動ブレーキは装着されているだろうか。技術革新の恩恵を感じながらハンドルを握れたらうれしい。

 (藤井雄次)

 

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