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眼鏡かけ個人情報守れ 活用広がる顔認証システム

年度内の発売を予定する「プライバシーバイザー」の試作品。より眼鏡に近いデザインに改良された=鯖江市の前沢金型で

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 目、鼻、口の位置関係、顔の凹凸などの特徴で個人を識別する「顔認証システム」。新型スマートフォンは顔認証でロックを解除する機能を備えるなど活用の幅が広がる中、鯖江市の企業などは顔認証を防止する眼鏡の開発に力を注いでいる。利便性の裏で損なわれかねないプライバシーの保護に着眼した取り組みだ。

 ロシアで昨年、ある写真家が実施した実験が注目を集めた。国内の地下鉄で見ず知らずの人の写真を一カ月以上撮り続け、誰もが利用できる顔認証アプリにその写真を入力。ロシアの主要会員制交流サイト(SNS)で公開されているプロフィル画像から名前などを割り出すというもので、成功率は70%に上った。

 「顔は修正の利きにくい個人情報」。約五年前から顔認証の研究に取り組む国立情報学研究所(東京)の越前功教授はこう指摘する。日本国内で目立った被害は報告されていないが「誰もが高性能カメラを持つ時代。悪用されれば、ストーカーなどトラブルや犯罪につながる可能性は十分にある」とみる。

 越前教授は鯖江市の眼鏡部品製造業「前沢金型」と合同で、顔認証を防ぐ眼鏡「プライバシーバイザー」の開発に取り組んでおり、八月には二〇一五年に発売した初代版を改良した新版を発表した。ゴーグルタイプだった初代版を眼鏡に近いデザインに変更。特殊加工されたレンズを上に一〇度傾けることで、光を反射させてカメラに顔が検出されるのを防ぐ。試験での防止率は約90%あったという。

 価格は二万円までを想定し、年度内の発売を目指している。今後の展開として、レンズに度を入れることや、通常の眼鏡に装着する型にすることも技術的には可能という。

 「プライバシーに関して日本は発展途上国」と話すのは、前沢金型の玉田隆則社長(52)。「自分も当初はピンとこなかった。ただ、自分が撮った写真で家族や周りの人が被害を受ける恐れがあると思うと…」。顔認証システムの危険性に気付いた時、考えが変わった。

 消費者がどれほど顔認証について危機感を持ち、需要を確保できるかは未知数だ。ただ、玉田社長は「便利な技術は急速に発展するが、その弊害は見過ごされがち。(商品が)世の中に問題を提起する契機になれば」と力を込める。

◆<取材後記> 便利さと危険性同居

 「顔や名札がアップで写らないように」

 小学校での取材で、教員から撮影について配慮を求められることは少なくない。近づいて良い表情を写したいのだが、急速な発展を遂げる顔認証システムの実情に触れると、子どもの安全を気遣う学校側の対応も理解できる。

 スマホによって、気軽に高性能カメラで写真を撮り、SNSに投稿できる時代。全世界に向けて情報発信できる半面、自分だけでなく周囲にも被害が及ぶ可能性は十分考えられる。便利さと危険性の両方を理解しておくことが大切だろう。

 (玉田能成)

 

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