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経済効果も環境面に懸念 県のコウノトリ事業

放鳥されるコウノトリ=2016年9月25日、越前市湯谷町で

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 二〇一一年に始まった県のコウノトリ飼育・放鳥事業。コウノトリが兵庫県から飛来した縁で、里山再生のシンボルとしてコウノトリの飼育・放鳥や越前市白山、坂口地区での環境保全活動を展開した。過疎化が進む地元では、活動を通した活性化や新たな「ブランド」誕生を歓迎する。ただ、専門家の中には弊害を懸念する声もある。

■感謝

 県の事業に先立ち、〇八年に「コウノトリ呼び戻す農法」部会を立ち上げた人がいる。越前市都辺(とべ)町の農業恒本明勇(つねもとあきお)さん(70)だ。〇六年から仲間四人と有機農法を始めた恒本さんにとって、コウノトリの放鳥事業は思わぬ幸運だった。

 コストの掛かる有機農法を営む農家にとって、採算性は大きな課題。「どんなに一生懸命作っても、それを消費者に伝える販売ルートがない。その点、コウノトリは経済効果がある」と話す。県の認証を受けた「コウノトリ呼び戻す農法米」が人気を呼び、価格は通常のコメの倍以上。コウノトリのブランド力で「なんとかやっていけている」(恒本さん)のが現状だ。

■疑問

 一方、福井大准教授の保科英人(ほしなひでと)さん(44)は「コウノトリをシンボルにするのは、間違っていない」と一定の理解を示しながらも、疑問を投げ掛ける。「コウノトリ事業は、果たして環境保全につながるのか」。生物学が専門の保科さんは「コウノトリは里山全体の一部にすぎない。一部に力を入れ過ぎることで、さまざまな弊害を生んでいる」と指摘する。

 懸念するのは、コウノトリの餌となる外来種の拡散だ。餌の確保は容易ではなく、地元では外来種を放つ行為もなされていた。これにより、元々の自然環境が失われる事態が起きている。

 例えば、絶滅危惧種のアベサンショウウオの被害。繁殖地だった白山・坂口地区の湿地で、ある住民がアメリカザリガニを放流し、全ての幼生が姿を消した。アベサンショウウオ研究の第一人者である越前市の元小学校長、長谷川巖(いわお)さん(73)は「腹立たしいが、言っても言っても、他の誰かがまた何かやってしまう」と肩をすくめる。

■意義

 コウノトリ事業の意義は何だろうか。県自然環境課の西垣正男主任は「これまではいまひとつ、自然の保護に対する県民の関心が呼べなかった。その点、コウノトリの波及効果は大きい」と振り返る。

 確かに、環境保全の意識は県民の間で広く認知された。だが、西垣主任は「ブームは、いずれ去ってしまう。ゆっくりと続けることに意義がある」と語る。事業を成功に導くには、課題の解決を図りつつ、地道な取り組みが続くような努力が求められる。

 (藤共生)

 

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