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石垣、天守なくても歴女ら続々 各地で劣化、崩落

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 城の天守を支える石垣の価値を見直す動きが広がっている。築城当時の姿を今に伝え、歴史好きの女子「歴女」が天守がない城跡だけでも足を運ぶなど、人気を集めつつある。一方で明治期以降、石垣を補修する職人は減少。各地の石垣は手入れが行き届かず、災害で崩落する事例が相次ぐ。国は石垣の保存技術を、文化財を支える匠(たくみ)の技と認定し、保全を後押ししている。

 秋が深まった十月下旬の平日、数十人の人波が黙々と石段を登っていた。女城主で知られる岐阜県恵那市の岩村城跡。櫓(やぐら)などは明治期に取り壊され、今はこけむした石垣の上でススキが風に揺らぐ。茶屋もない寂れた場所だが、観光人気が高まっている。

 「こんなにすごい石垣をどうやって山の上に造ったのか、どういう暮らしがあったのか。想像するのが楽しい」。岐阜市から訪れた萩野文穂さん(44)は興味深そうに眺めて回った。

 NHK連続テレビ小説で城下町がロケ地になった効果もあり、旅行サイト「トリップアドバイザー」が発表した今年の「旅好きが選ぶ!日本の城」で名古屋城や彦根城を上回る十位に食い込んだ。ふもとの歴史資料館で働く佐々木康夫さん(78)は「終戦後は草だらけで誰も興味を持っていなかった。こんなに人気が出るとは」と驚きを隠さない。

 城跡人気の先駆けは、天空の城で知られる兵庫県の竹田城跡だ。CMなどの露出効果で来場者は二〇〇五年度の三万三千人から、一七年度は二十二万四千人へと膨らんだ。

 岐阜県中津川市の苗木城跡は眺望の良さも話題となり、昨年の来場者は四年前の五・五倍の七万七千人に。石田三成の居城だった滋賀県彦根市の佐和山城跡はわずか数個の石が残るのみだが、三成をしのぶ歴史ファンが続々と訪れる。

 「史実に忠実でない天守や建物があるより、当時の雰囲気が感じられていいと気付く人が増えてきた」と城郭考古学者の千田嘉博さん(55)。

 しかし、天守が残る城も含め、全国の石垣には危機が迫る。明治期以降、石垣を補修する職人、石工(いしく)が減り、保守管理がおろそかになりもろくなった。近年、熊本城は地震で、丸亀城(香川県)は豪雨で石垣の一部が崩落。対策が急務となっている。

 文化庁は〇九年、石垣に関する技術を「選定保存技術」に認定。一五年には「石垣整備のてびき」を作成し、若い石工の養成支援に力を入れる。崩落前の石垣の写真をコンピューター解析し、石をミリ単位の誤差で以前の場所へ戻すなど、最新技術も導入されている。

◆評価見誤り、計画進まず 名古屋城の天守復元 

 名古屋城では、戦後に建てられたコンクリートの天守を木造に建て替える事業が進むが、石垣の保全を後回しにする名古屋市の方針に専門家が猛反発し、進捗(しんちょく)が滞っている。

 名古屋城の石垣は江戸初期に積まれた部分の状態がよく、国内の城郭の中でも価値が高いとされる。しかし、築城から四百年がたち、劣化が進行。天守台北面が外側にふくらんだ「はらみ」は顕著で、保全対策が求められている。市は七月、石垣の保存状態の調査結果を「おおむね安定している」と、市の有識者会議「石垣部会」に提示し、反発を受けた。

 同部会は、石垣の補修を天守完成後に後回しする方針を批判し、議論が紛糾。市は今秋に天守復元計画を文化庁に提出するスケジュールだったが、先延ばしになった。

 市は今後、文化庁に選定された石工などでつくる「文化財石垣保存技術協議会(文石協)」の助言を受け、石垣部会も納得する保全方法を模索する。河村たかし市長は木造天守の二〇二二年末完成にこだわっているが、石垣を巡る事業の遅れで、目標に間に合わせるには最短十カ月の工期圧縮が必要となってきた。「どういうスケジュールでいくか、文石協の人と話し合ってみないとわからん」と、工期見直しの可能性に含みを持たせる。

 将来的に、全国の城郭で老朽化や耐震性不足に伴う建て替えが予想される中、第一号となる名古屋城の計画は他の指標。文化庁も観光的な魅力と史跡としての価値の保全の両立を実現できるか、注視している。

 (垣見洋樹、谷悠己)

観光地として人気を集める岩村城跡の石垣=岐阜県恵那市岩村町で

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