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本庶佑氏にノーベル医学生理学賞 オプジーボ開発でがん免疫療法革命

ノーベル医学生理学賞の受賞が決まり、記者会見する本庶佑京都大特別教授=1日夜、京都市左京区の京都大で(伊藤遼撮影)

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 スウェーデンのカロリンスカ研究所は一日、二〇一八年のノーベル医学生理学賞を、がんの新しい治療法を切り開いた本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授(76)と、米テキサス大のジェームズ・アリソン教授(70)に贈ると発表した。授賞理由は「免疫の働きの低下を防ぐがん治療法の発見」。治療の可能性を大きく広げたことが評価された。医学生理学賞は一昨年の大隅(おおすみ)良典・東京工業大栄誉教授に続き日本人で五人目。日本出身のノーベル賞受賞者は、米英国籍者を含め二十七人となった。

 二人はいずれも、がん細胞が人間の免疫の攻撃から逃れる仕組みを発見した。その仕組みを抑える薬が、二人の研究成果をもとに開発され、これまで治らなかったがんが、免疫の力で治るようになった。

 アリソンさんは一九九五年、免疫の主役の一つで白血球の一種であるT細胞の活動を抑える「CTLA−4」というタンパク質が、T細胞の表面についていることを発見。本庶さんは九八年、別の「PD−1」というタンパク質がT細胞を止めることを発見した。二つはいわば免疫にブレーキをかけるスイッチだ。がん細胞はこのスイッチを押してT細胞の攻撃を免れていた。

 「スイッチを押せなくすれば、ブレーキがかからずT細胞はがん細胞を攻撃し続けるはず」と考えた本庶さんは、小野薬品工業(大阪市)などと協力し、PD−1のスイッチにふたをして押せなくしてしまう新薬オプジーボを開発。一四年に世界に先駆けて日本で承認された。二人の研究を出発点にした薬は、世界の製薬会社がこぞって開発に力を入れ、がん治療に幅広く使われ始めている。

 本庶さんは京都大で開かれた会見で「がんが治った人に、あなたのおかげだと言われると何よりもうれしい。さらに多くの人を救えるよう研究を続けたい」と喜びを語った。

 授賞式は十二月十日にストックホルムで開かれる。賞金は九百万スウェーデンクローナ(約一億一千五百万円)を二人で等分する。

 <本庶 佑氏(ほんじょ・たすく)> 1942年京都市生まれ、小学校から高校まで山口県宇部市で過ごす。京都大医学部を経て71年に同大大学院医学研究科博士課程を修了し、米カーネギー研究所研究員。東京大助手時代の78年、抗体が、迎え撃つ異物に合わせて姿を変える「クラススイッチ」の仕組みを解明した。79年大阪大教授、84年京大医学部教授。2012〜17年に静岡県公立大学法人理事長。17年に京大特別教授。恩賜賞・日本学士院賞、ロベルト・コッホ賞などを受賞。文化勲章、文化功労者。京都市在住。

 <オプジーボ> 小野薬品工業が2014年に発売した新たな種類のがん治療薬。体内の異物を攻撃する免疫の力を強め、がんを排除する「免疫療法」の薬で、手術やがん細胞を破壊する抗がん剤、放射線に続く第4の治療と期待されている。国内では、肺がんや胃がんなど7種類のがんを対象に保険が適用されている。ただ年間1000万円以上かかるとも言われる医療費が財政を圧迫するのが問題点。高額なこの薬を無駄なく使う方法の確立が急務となっている。 (共同)

◆薬で元気になれたの言葉 賞よりも喜び

 「あんたの薬のおかげで元気になれたと言われるのがどんな賞よりも喜び」。本庶さんは一日夜、京都市の京都大吉田キャンパスで記者会見し、思いを語った。

 本庶さんは午後七時ごろ、タクシーで京都大の時計台前に到着。ノーネクタイにグレーのジャケット姿で現れ、出迎えた知人に「ありがとう」と会釈しながら、玄関をくぐった。

 山極寿一学長らと並んで臨んだ記者会見でも、口を一文字に結ぶ、いつものきまじめな表情で語った。家族から「おめでとう」とねぎらわれたことを話した時、初めて笑みがこぼれた。安倍晋三首相からの電話にも「ああ、どうも。ありがとうございます」と笑顔で応じた。

 受賞決定の連絡は午後五時ごろ、研究室で論文の構成について、弟子らと議論していた時だった。「いつどういうふうに発表されるかも、知らなかった。今年は誰なのかと思っていたところ、電話がかかってきたので少しびっくりした」とユーモラスに語った。

 がん研究を志したきっかけを問われると、京大医学部時代に進行性のがんで同級生を亡くした体験を理由の一つに挙げた。「優秀だったのに気の毒だった。がんは大変な病気だと。少しでも貢献できればと思った」

 共同受賞したアリソンさんとは古くから交流がある。「彼と僕の研究した二つの抗体を組み合わせることで、より強い効果が出ることが知られている。ベストな組み合わせと思っている」と満足そうに話した。

 (勝間田秀樹)

 

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