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名大、軍事研究行わず 方針策定、関係機関の資金禁止

 名古屋大(名古屋市千種区)が、軍事利用を目的とした研究を禁止する基本方針をつくった。近く公表する。国内外の軍事、防衛関連機関から資金提供を受けることを原則として禁止。人道目的の研究は例外として認めるが、成果の公開を条件とした上で、学内に設置する審査委員会で可否を判断する。

 京都大や琉球大なども、軍事研究を行わない方針を定めている。名大が続いたことは、他の大学にも影響を与えそうだ。

 防衛省は二〇一五年度、技術を軍事にも民生にも利用できる「デュアルユース」と呼ばれる研究に助成する公募制度を始めた。こうした動きに対し、国内の科学者で構成する日本学術会議は昨年三月、「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」とした過去の声明を継承すると表明。安易な応募に歯止めをかけるため、大学ごとに審査基準をつくるよう求めた。

 名大は二〇〇〇年に定めた学術憲章で「人々の幸福に貢献することを使命とする」という理念を打ち出しており、松尾清一学長は「明らかな軍事目的の研究は名大では難しい」という姿勢を示していた。ただ、軍事研究を明確に否定する指針はなかったため、明文化する必要があると判断。各学部などから意見を集約し、基本方針づくりを進めていた。

 大学関係者によると、基本方針には「軍事利用を目的とする研究を行わない」と明記。防衛省の助成制度を念頭に「国内外の軍事・防衛を所管する公的機関から資金の提供を受けて行う研究は行わない」とした。

 大学関係者は、例外とする人道目的の研究として「地雷の撤去技術など、人々の命を救うことになる研究」を例示。研究成果の公開を条件とする理由は「特定の国や機関だけが技術を独占すれば、軍事的に優位に立つための技術になりうる。成果を広く知らしめれば、それを防げる」と説明した。

 (坪井千隼)

◆国交付金減、研究苦しく

 各国の軍事・防衛当局の資金で、大学が研究を進めることは「軍学共同研究」の一つとみなされている。参加制限が議論される背景には、研究費不足に悩む中で、研究者がなびきかねない現状がある。

 大学や企業の研究に助成する防衛省の「安全保障技術研究推進制度」には二〇一五年から一八年までに、大学などの教育機関から計百十五件の応募があった。

 一方、国から各国立大に、規模などに応じて支給される交付金は、この約十年で一割減った。審査を通れば得られる「競争的資金」は増えたが、研究成果などが問われるため、獲得に苦しむ教員もいる。

 日本学術会議は一七年三月の声明で「政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある」と発表。防衛省側は創設した制度について「研究成果の公表を制限しない」と説明するが、軍事機密につながりうる研究だけに「『結果は口外するな』と求められ、学問の自由がおびやかされるのではないか」という懸念は大学関係者の間で根強い。

 科学者の軍事研究に詳しい池内了(さとる)・総合研究大学院大名誉教授は「多くの大学は軍学共同の研究に抑制的だが、軍事への加担に対する危機意識が薄い若手研究者も増えている。懸念は残っている」と話している。

 (安福晋一郎)

 

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