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倒れた自宅、父返事なく 厚真町、懸命の捜索

 北海道厚真町桜丘で、中田一生さん(76)が土砂にのまれた自宅から遺体で見つかった。七日朝には地元の寺院に運び込まれ、親族や住民らが亡きがらを迎えた。二人暮らしの長男一好さん(50)は遺体が発見された際、一生さんが右腕で頭を守っているように見えた。「おやじなりに必死に身体を守ろうとしたんだろう。相当、おっかなかったと思う」と空を見つめた。

 一好さんは二階の自室で、一生さんは一階の和室で就寝していた。三時すぎ、突然「ダダダダダッ」というごう音とともに、立つこともできない激しい揺れに襲われた。揺れが収まるとスーッと家が傾きだした。

 「父さーん!」と何度も叫び、耳を澄ました。返ってくるのは、ミシミシと傾く家がきしむ音だけ。明るくなって外に出ると、倒れた自宅一階には、崩れてきた土や木々が突き刺さっていた。「奇跡を信じたかった」。だが、土の中から運び出された一生さんの目が開くことはなかった。

 次男の子である双子の孫が来年、小学生になるのを心待ちにしていた一生さん。最近は口癖のように、「ランドセル買ってやらねば」と優しくほほを緩めていた。「当たり前に来ると思っていた明日が来ないなんて…」。気丈に振る舞っていた一好さんは、目を赤くして遠くを見つめた。

 一方、同町吉野では七日朝も自衛隊員や警察官らが至る所で手を休めることなくスコップや重機で土を掘り返し、捜索を続けた。

 跡形もなく崩れた民家で、土を掘っていた自衛隊員たちの手が止まった。土砂の中から出て来たのは、泥にまみれた白い表紙のアルバム。一人の男性自衛隊員が同僚から受け取り、がれきが積み重なる現場の片隅に、そっと置いた。

 そこには他にもクマのぬいぐるみや、幼い少女を抱く女性が写った写真、児童書、テレビゲーム機。この場所で確かに人が暮らしていたことを伝えていた。

 (井本拓志、河北彬光、安福晋一郎)

 

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