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「共謀罪」採決強行、衆院委可決 30時間で見切り

国会前で「共謀罪NO」のプラカードを掲げ怒りの声を上げる市民ら=19日午後

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 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案は十九日の衆院法務委員会で、自民、公明の与党や日本維新の会の賛成多数で可決された。自民党議員が質疑を終えるよう求める動議を提出し、与党は採決を強行。二十三日に衆院を通過させ、二十四日の参院審議入りを図る。監視社会を招く恐れへの懸念も根強く、民進、共産、自由、社民の野党四党は採決強行に反発、衆院本会議での採決阻止に向けて連携を強化することを確認した。

 採決時、一部の野党議員が自民党の鈴木淳司委員長席を取り囲み騒然とした。法務委終了後、金田勝年法相は国会内で記者団に「集中的に審議し結論に至った。努力を重ね、誠実に対応してきた」と語った。

 法務委の質疑で民進党の山尾志桜里氏は、LINE(ライン)やメールが監視され人権侵害につながると追及。金田氏は「通信傍受の対象犯罪ではなく、監視はできない」と説明した。

 与党は組織犯罪処罰法改正案の後に、性犯罪を厳罰化する刑法改正案の今国会成立を目指す。ただ、審議日程は想定より遅れており、与党は六月十八日に会期末を迎える国会会期の延長を視野に入れる。

 組織犯罪処罰法改正案は四月に実質審議入り。与党は法務委採決までには参考人質疑を除き三十時間程度の審議が必要とみており、十九日にこれを超えたため採決に踏み切れると判断した。

◆一般人も対象、線引き不明確

 <解説> 審議が不十分なまま、「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案の採決が強行された。政府は目的が「テロ対策」であり、一般人は捜査の対象にならないと強調するが、審議を進めるほど疑念が生まれている。

 政府は、立法の必要性を裏付ける立法事実としてハイジャックなど三つのテロ事例を挙げたが、野党や有識者から現行法で対処可能と反論を受け、根拠が揺らいだ。この日の審議でも、金田勝年法相の口から新たな具体例は語られなかった。

 対象犯罪を二百七十七にした理由も「テロ集団を含む組織的犯罪集団の関与が現実的に想定されるもの」とするだけだ。「資金獲得のためのキノコ狩りが想定できる」といった政府の説明は説得力を欠いている。

 より色濃くなったのは、捜査が心の中に踏み込むことや一般人が捜査対象になる恐れだ。一般人を調べて嫌疑の有無を判断するケースもあるはずだが、金田氏は「一般人に嫌疑が生じることはあり得ないので、捜査対象になることはない」と繰り返すばかりだ。

 法案は対象を組織的犯罪集団とし、犯罪の計画だけでなく準備行為がなければ処罰できないことにしている。しかし、法案が成立すれば、三百近い犯罪について計画の疑いがある段階で捜査できることになる。実行前の計画を立証しなければならないため、市民の監視が強まるという懸念は増す一方だ。

 「組織的犯罪集団」「計画」「準備行為」といった政府が歯止めと位置付ける条文の定義について議論が尽くされていない。この曖昧さが解消されない限り、捜査機関の恣意(しい)的な捜査や市民の萎縮という懸念はなくならない。

 (東京社会部・山田祐一郎)

 

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