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世界一美しい紙を再び 愛知県芸大、手すきで挑戦

ウズベキスタンの手すき紙、サマルカンド紙を手にする柴崎幸次教授=愛知県長久手市の県立芸術大で(中村千春撮影)

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 かつて「世界で最も美しい紙」とうたわれながら、歴史の中に消えた中央アジアの「サマルカンド紙」を、日本の手すき和紙の技法でよみがえらせる取り組みを愛知県立芸大(愛知県長久手市)の柴崎幸次教授らが始めた。既に原料や製造法の分析を開始。新年度には試作品の製作に入り、二〇一九年度までの復活を目指す。

◆和紙の兄弟「サマルカンド紙」

 サマルカンド紙はおよそ千年の歴史があるとされ、シルクロードの中継点として発展したウズベキスタンの古都サマルカンドで作られていた。イスラム教の聖典コーランや細密画に使われ、高い評価を得ていた。だが、二百年ほど前に最後の工房が閉鎖され、製造技法も失われた。

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 柴崎教授らの挑戦は、一五年十一月、県立芸大がウズベキスタンの国立美術デザイン大と、学術交流協定を結んだことがきっかけだったという。

 製紙技術は紀元前の中国発祥と考えられている。サマルカンド紙と手すき和紙は東西に分かれて伝わった“兄弟”で、ともに手すきでつくる。機械製紙が発達した現在、本美濃紙など国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録された日本の伝統技法は、復活への大きな手掛かりになり得る。

 悲願成就のため、ウズベキスタン側からサマルカンド紙の貴重なサンプル資料が提供され、手すき和紙の研究を続けている柴崎教授が協力に名乗りを上げた。

 資料を顕微鏡で分析するなどした結果、麻などの古い布が材料に使われた可能性が高いと判明。紙の繊維の密度が高くインクがにじみにくいことや、表面に米粉が塗布されているなどの特徴も分かったという。

 今後はウズベキスタンの研究者とも連携。現地で別のサンプル資料を分析し、原材料や製造法を絞り込んでいく。その上で、県立芸大にある手すき和紙工房で、試作品の製作を進める。

 柴崎教授はサマルカンド紙の復活について、「書や絵画は、紙と一体の芸術なので、美しい紙を復興させることは、歴史的な意味だけでなく芸術的な意味からも重要だ。手すき和紙技術で復興できれば、日本の伝統技術の復権にもつながる」と語った。

 (坪井千隼)

 <製紙技術の伝播(でんぱ)の歴史とサマルカンド紙> 製紙の技術は中国で確立し、日本には7世紀初頭までに伝わったとされる。西方世界への伝播のきっかけは、751年に唐とアッバース朝が戦った「タラス河畔の戦い」。手すき紙職人が捕虜となり、サマルカンドに製紙工房が建てられて、盛んに紙が作られた。その後、中東や欧州などに伝播していったと考えられている。

 

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