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共創 アジアへ

第4部 続・トヨタ 道を知る(8)

タイ国立チュラロンコン大の構内で続く共有サービスの実証実験。超小型EVのコムスが使われている=バンコクで(山上隆之撮影)

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 くしくもタイ進出から六十年の節目だった。トヨタ自動車の新組織が二〇一七年一月、首都バンコクに隣接するサムットプラカーン県に誕生した。

 「トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング・アンド・マニュファクチャリング」(TDEM)。研究開発と部品調達を担う従来のアジア拠点に、子会社のダイハツ工業に委ねる新興国向け小型車づくりを支える前線基地の機能が加わった。

 「タフさや力強さなど、現地の好みに寄り添う形で、車のデザインを変更し、開発できるようになってきた」。総勢二千五百人が働くTDEMを担当するトヨタ常務役員の松田進(53)は、技術者の成長に手応えを感じている。新型車の開発に全責任を負うチーフエンジニアを務められる若手も育ってきた。

 松田はダイハツとの連携の進化を重点課題に挙げる。軽自動車で培われた良品廉価のダイハツの強みは、どうすればトヨタの車づくりに融合できるか。「いずれは一緒に開発し、一緒に売るという段階に持っていかないと」と前を向く。

 東南アジアは女性の社会進出が進んでおり、かつての日本のように小型車の需要が高まっていく。ダイハツとの協業は重みを増す。

 タイトヨタも女性が運転する場面を意識して宣伝に使っている。社長の菅田道信(57)は「既にアジア市場は女性が引っ張っている面がある」と感じる。たびたび接見するシリントン王女とは「女性の活躍」がよく話題に上がる。

 タイ市場で三割のシェアを持つトップメーカーには、ハイブリッド車(HV)をはじめ環境車の普及に加え、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といった生産革命への期待も高い。

 タイトヨタ会長のニンナート・チャイティーラピンヨウ(71)は「マーケットリーダーとして国の課題に取り組む必要がある」と言い切る。部下には「現地現物」で社会の問題を吸い上げるように指示している。

 バンコク名物の渋滞がその一つ。プミポン前国王は一六年に死去する前、病室から渋滞のひどさを観察し、高速道路の拡張を助言するほど案じていた、とニンナートは明かす。

 トヨタはタイ政府などと協力し、車の流れを「見える化」することで渋滞の解消につなげる実験を続けてきた。一七年末からは一人乗り電気自動車(EV)のシェアリング(共有)テストに乗り出した。

 今年六月、ライドシェア(相乗り)や配車タクシーの東南アジア最大手、グラブ(本社シンガポール)に千百億円の出資を決めたのも、渋滞や排出ガス削減が念頭にある。

 「大胆に、新しい取り組みを展開する場」。トヨタ中国・アジア副本部長も務める松田は、今後のタイを見据える。公的機関や販売店、部品会社などと、長い年月をかけて結んだ信頼関係が、財産として生きる時でもある。

 タイで一七年に約五十二万台を生産し、約三十万台を輸出した。これからは車を造って売るだけではない。賢い車の使い方を提案できるモビリティー(移動)サービスを構築する。そして、ほかの新興国に広げる。トヨタは新たな使命を担っている。

 (敬称略)

 =第四部終わり(山上隆之、鈴木龍司、後藤隆行が担当しました)

 

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