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共創 アジアへ

【ネット独自】タイトヨタ会長に聞く

本紙のインタビューに答えるタイトヨタのニンナート会長

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 タイトヨタは二〇一一年の大洪水をはじめ、さまざまな危機を経験してきた。ニンナート・チャイティーラピンヨウ会長(71)は「困難を乗り越えれば、再び上昇できるという教訓を得た」と振り返る。自動車産業が大きな変革期を迎えた今こそ「顧客のニーズの変化を感じ取ることが重要」と現地現物の大切さを説く。(聞き手はバンコク支局・山上隆之、写真も)

 ―入社の経緯から教えてください。

 「チュラロンコン大学で機械工学を学び、一九七一年にエンジニアとして入社しました。トヨタは多国籍企業ですからコネが不要(笑)。実力で勝負できます。実家がかつてのバンコク支店の近くにあり、子供のころからトヨタに慣れ親しんでいました」

 ―最初の配属は。

 「サムロン工場で自動車の床下のボルトを締めたり、緩めたりの仕事でした。日本人の上司に『実際に現場で働くと、従業員の苦労が分かるよ』と教えられて。おかげで工場の従業員と良い関係をつくることができました」

 ―トヨタ生産方式をタイ人従業員に根付かせるのに苦労しましたか。

 「多くのタイ人は、(必要なときに必要な分だけを生産する)『ジャストインタイム』だけだと思っていた。もう一つの柱、(異常を感知したら機械が自動停止して不良品の発生を防ぐ)『自働化』がタイ人には理解が難しい。大学でもジャストインタイムしか教えられていませんでした。私は幸いなことに、日本人の上司が教えてくれ、貴重な経験となりました」

 ―現場で学んだ印象は。

 「工場の生産活動に非常に役立つものだと実感しました。ムリ、ムラ、ムダをなくすという考え方は、私のプライベートにも有効でした。タイの役所を指導したこともあります。役所はムダが多いですから」

 ―タイは水害に悩まされてきましたね。

 「海から水が押し寄せて自動車にかかると、さびが発生してしまう。それに対処するため電着塗装を八二年に導入しました。塗料を吹き付けるのではなく、タンクに浸して塗るんです。日本車のイメージも向上できました」

 ―二〇一一年の大洪水では一時、生産停止に追い込まれました。

 「タイトヨタの三工場は浸水しませんでしたが、百社以上の仕入れ先が被災しました。工場が止まっていたとき、従業員には被災者の救援活動をしてもらいました。私も軍にお願いして軍用車にコメを積んで、被災者に配布しました」

 ―会長自身も被災現場に行ったのですか。

 「はい。これをきっかけに、私は多くのタイ人に知られるようになりました。ある日、食堂に入ると、店員が『テレビで見ました』と言って、料理を大盛りにしてくれました。大洪水で感じたのは、タイ人の思いやりです。危機的な状況になると、タイ人は一丸となって活動をします」

2011年の大洪水で、救援物資を船で運ぶタイトヨタのニンナート氏(左から7人目のサングラス姿で座っている)ら(提供写真・タイトヨタ)

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 ―新興国向け戦略車「IMV」シリーズの累計輸出台数が三百万台を超えました。

 「このプロジェクトは非常に良かった。〇四年の開始以前、タイトヨタは国内販売に力を入れていました。海外輸出も加わったことで、タイ国内の経済が悪くなったときも、われわれは輸出に力を入れることができた」

 ―IMVのピックアップ(荷台付き)トラック「ハイラックス」の日本輸出も進めていますね。

 「とてもうれしかったことですね。日本の販売店や顧客にタイの品質が認められたのですから。『日本が認めた』ということで、今後は全世界のユーザーからの信頼が増すのでは」

 ―トヨタがタイ社会で強い基盤を持つ企業になったのは、なぜでしょう。

 「豊田佐吉翁の精神を受け継ぎ、国の持続的発展に貢献するとの信念を持ってやってきました。高品質な商品でお客さまのニーズに応えることを使命としています。他社に先駆け、社会環境貢献活動も始めました」

 ―部品メーカーや販売店との関係は。

 「一九八二年に三十二社の部品メーカーで設立されたタイトヨタ協力会は現在、加盟社が百七十二社に増えました。知識や経験の交流を通じて、生産性向上やコスト削減に取り組んでいます。販売店とも八〇年にタイトヨタ販売店クラブをつくっています。部品メーカーや販売店とともに成長していくという原則の下、各社と対話を重ね、問題を分析し、困難を早く乗り越えられるよう奔走してきました。各社との信頼関係が一層深まり、より強固な関係に発展しています」

 ―二〇一七年から初の生え抜き会長となりました。今後、どんな仕事が残っていますか。

 「二、三年後に自動車だけでなく、すべての産業で大きな転換点を迎えます。IoT、ビッグデータ、人工知能、さらには各国政府が促進する電気自動車(EV)。車をたくさんつくって走らせることで渋滞問題や気候変動の問題も。トヨタはタイ市場で最大のシェアを持つメーカーとして、これらの課題に取り組まなければならない。部下たちには『現場で起きていることを見てきなさい』と言っている。現地現物です。お客さまのニーズの変化を感じ取ることが重要です」

 

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