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丸栄 思い出ありがとう

夫と歩んだ人生の全て 精肉売り場杉本さん

常連客と笑顔で話す「肉の杉本丸栄店」の杉本日左江さん=30日午後

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 「最後の日に、行ってきます」。杉本日左江(ひさえ)さん(77)は三十日の朝、名古屋市千種区の自宅で仏壇に手を合わせた。丸栄の地下一階のテナント店「肉の杉本丸栄店」で、売り場の責任を持つ「おかみさん」。五十年以上、ほぼ毎日立ち続けた店は十三年前に病死した夫・吉弘さんとの思い出の場だった。

 愛知県岡崎市の高校を卒業後、丸栄に入社。二階の紳士雑貨でコートやカバンの販売員だったころ、常連客の吉弘さんと知り合い、いつしか恋仲に。「わしがやる」。吉弘さんは一九六二年、精肉店を営む実父に直談判し、丸栄に支店を出した。「主人は丸栄が大好きだった。元気でいれば閉店には絶対に反対していた」とほほえむ。

 バブル期など、景気が良かった時代には、一枚五千円もするステーキがよく売れた。お中元やお歳暮の時期は配送準備で未明まで働いた。従業員たちと夜食を食べ、近くにあった銭湯に通ったのも良い思い出だ。「忙しかったけど、働くことが楽しくて仕方なかった。いいことも悪いことも丸栄が人生の全てだった」

 営業最終日の丸栄は、かつてのようなにぎわいを見せた。「最後だから顔を見にきたよ」「久しぶり。これからも元気でね」。何十人もの常連客が来てくれた。いつもの接客以上に、笑顔が絶えなかった一日。商品は飛ぶように売れ、午後二時すぎには完売した。

 吉弘さんが亡くなってから、帰宅してから仏壇に手を合わせるのを日課にしてきた。忙しい朝にも手を合わせたこの日は特別。「大事にしていたお店が今日、無事に終わりましたよ」。帰宅後、老舗百貨店を愛した主人に、にぎわった最後の姿を伝えた。 (竹田弘毅)

 

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