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丸栄 思い出ありがとう

丸栄は石材の“百貨店”

大理石「蛇紋」で飾られた外壁をなでる名古屋市科学館の西本昌司主任学芸員=名古屋・栄の丸栄で

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 三十日で閉店する名古屋の老舗百貨店、丸栄の内外装に、今では入手困難な大理石がふんだんに使われている。建物は九月に取り壊される予定で、間もなく見られなくなるが、どれほど貴重か。「街の中で見つかる『すごい石』」(日本実業出版社)の著者で名古屋市科学館主任学芸員の西本昌司さん(52)に案内してもらった。(竹田弘毅)

 「初めて見たとき壮観さに感動した。こんな広い面に使っているのは日本でもここだけだろう」。白い筋が無数に入った深緑色の外壁を西本さんが慈しむようになでる。この外壁は埼玉県皆野町産の大理石「蛇紋」で飾られている。

岐阜県大垣市産の大理石「紅更紗」を使った階段=名古屋・栄の丸栄で

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 店内の階段の壁や手すりには、ひび割れたような模様の岐阜県大垣市産の大理石「紅更紗(さらさ)」がある。一枚の石材を切り開いた左右対称に、張り付けた職人の美意識が垣間見える。ピンクがかった色合いの山口県産「八重桜」など、珍しい国産石材は随所にあった。

 エレベーターの扉周辺にある大理石は赤色が鮮やかなフランス産で、名古屋では丸栄だけと考えられるという。「洋風建築へのあこがれがあったのでは。歴史を刻んだ石を見れば建設当時の事情や街の経済力が分かる」と西本さんは解説する。一階の床はイタリア産大理石で、アンモナイトなどの化石が浮かぶ。どれも一九五三年の建物の完成以来、お客を迎えてきた。

 国内では現在、人件費が高くて建築用石材がほとんど採掘されていない。近年は工期が短くなり、大量発注できる海外産の安い石材に頼っている事情もある。

1階床のイタリア産大理石にはアンモナイトの化石が浮かぶ=名古屋・栄の丸栄で

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 古い建物の建て替えが相次ぐ中、街に残る国産石材の価値は高まっている。西本さんは「丸栄は建てた当時の石材が残る文化財級の建物。壊すなんて大ショックだ」と、何らかの保存を訴えている。東京では貴重な石を使った建物の一部を保存する動きもある。

 

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