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知るコレ!

必要な細胞作って移植 iPS細胞と医療

京都(きょうと)大iPS細胞研究所(アイピーエスさいぼうけんきゅうじょ)の実験室(じっけんしつ)で治験(ちけん)について語る高橋淳(たかはしじゅん)さん=京都市左京区(さきょうく)で

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 iPS細胞(アイピーエスさいぼう)(人工多能性幹(じんこうたのうせいかん)細胞)を使(つか)って、難病(なんびょう)のパーキンソン病を治(なお)すという画期的(かっきてき)な治験(ちけん)(治療法(ちりょうほう)の試験(しけん))が、8月に始(はじ)まりました。iPS細胞という言葉(ことば)、よく見聞きしますね。一体どんな細胞で、どんな治療をするのか調(しら)べました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 人を含(ふく)めた動物(どうぶつ)は、受精卵(じゅせいらん)という1つの細胞(さいぼう)が基(もと)になっていることを知っていますか? 1つの細胞が2つの細胞に分かれ、4つになり…と、どんどん分裂(ぶんれつ)し、いろいろな種類(しゅるい)の細胞になっていきます。人の大人の体の場合は、約(やく)200種類、37兆個(ちょうこ)の細胞でできているそうです。

 これまで、皮膚(ひふ)や心臓(しんぞう)などの体の細胞に一度(いちど)なると、その後変(か)わらないとされてきましたが、これを覆(くつがえ)す大発見(だいはっけん)をしたのが、京都(きょうと)大iPS細胞研究所(けんきゅうじょ)(京都市)の所長(しょちょう)で、ノーベル医学生理学賞(いがくせいりがくしょう)を受(う)けた山中伸弥(やまなかしんや)さん(55)。体の細胞に特別(とくべつ)な遺伝子(いでんし)を4つ入れただけで、受精卵のように体のほぼすべての細胞になる能力(のうりょく)を持(も)ち、無限(むげん)に増(ふ)える細胞ができたのです。山中さんは2006年、「iPS(=inインducedデュースド pluripotentプルリポテント stemステム)細胞」と名付(なづ)けて発表(はっぴょう)しました。

 「細胞を使(つか)って病気(びょうき)を治(なお)す再生医療(さいせいいりょう)がしたいと願(ねが)ってきたので、iPS細胞の技術(ぎじゅつ)は理想的(りそうてき)でした」と振(ふ)り返(かえ)るのは、研究所の教授(きょうじゅ)で、脳神経外科医(のうしんけいげかい)として20年前からパーキンソン病を研究してきた高橋淳(たかはしじゅん)さん(56)です。この難病(なんびょう)は、体の動(うご)きに関(かか)わる脳のドパミン神経が減(へ)ることで、体が震(ふる)えたり筋肉(きんにく)がこわばったりします。iPS細胞からドパミン神経細胞を作って脳に移植(いしょく)すれば、パーキンソン病が治ると考えました。

 高橋さんたちは、iPS細胞からドパミン神経細胞だけを作って選(えら)び出す技術を開発(かいはつ)し、サルの実験(じっけん)でこの細胞を移植してもがんができないことや、症状(しょうじょう)が改善(かいぜん)することを確認(かくにん)。今夏、国の許可(きょか)が下り、治験が始(はじ)まりました。具体(ぐたい)的には、iPS細胞から約500万個のドパミン神経細胞を作り、患者(かんじゃ)さんの頭蓋骨(ずがいこつ)に小さな穴(あな)を開(あ)け、脳の奥(おく)の線条体(せんじょうたい)に注射(ちゅうしゃ)します。今回は7人が対象(たいしょう)で、安全性(あんぜんせい)や効果(こうか)があるかを2年間みます。「ここからが本当のスタート。今までの研究が審判(しんぱん)を受けるという意味(いみ)で厳粛(げんしゅく)な気持ち」と語りました。

 同研究所によると、医療に使われるiPS細胞は、血(ち)を少量抜(しょうりょうぬ)き、血液(けつえき)の細胞に6つの特別な遺伝子を入れて2週間ほどで作られます。人の体に入れる細胞なので、雑菌(ざっきん)やほこりのない特別な部屋で細心の注意(ちゅうい)を払(はら)って扱(あつか)う必要(ひつよう)があります。多くの人に移植しやすいタイプのiPS細胞を作り、冷凍保存(れいとうほぞん)して備(そな)えているそうです。

 こういったiPS細胞(アイピーエスさいぼう)を使(つか)って病気(びょうき)を治(なお)す試(こころ)みは、他(ほか)にも。2014年には理化学研究所(りかがくけんきゅうじょ)のチームが、目の難病(なんびょう)「加齢黄斑(かれいおうはん)変性(へんせい)」を治すために、iPS細胞から作った目の網膜(もうまく)の細胞の移植(いしょく)を世界(せかい)で初(はじ)めて実施(じっし)。大阪(おおさか)大は心筋(しんきん)細胞を作り、重症心不全(じゅうしょうしんふぜん)の患者(かんじゃ)さんの心臓(しんぞう)に移植する計画を進(すす)めています。

 新しい医療(いりょう)を切り開(ひら)いたiPS細胞。ただ、移植治療する時には、望(のぞ)む細胞になりきれなかった細胞が腫瘍(しゅよう)になる可能(かのう)性などもあり、有効(ゆうこう)性や副作用(ふくさよう)を長期間調(ちょうきかんしら)べていく慎重(しんちょう)さは欠(か)かせません。高橋(たかはし)さんは「iPS細胞の医療への応用(おうよう)は大きな一歩ですが、昔(むかし)から多くの人々が病気を治したいと努力(どりょく)を重(かさ)ねてきた結果(けっか)です。若(わか)い人たちもそのバトンを受(う)け継(つ)ぎ、この新しい医療をさらに良(よ)いものにしてほしい」と語りました。

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