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知るコレ!

話し合い、学ぶ図書館 ラーニングコモンズ

開放的(かいほうてき)なレクチャーコーナー。夏休みの子ども向(む)けに開(ひら)かれた工作教室の会場として使(つか)われていた=名古屋(なごや)市中区(なかく)の愛知県図書館(あいちけんとしょかん)で

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 「ラーニングコモンズ(共(とも)に学ぶ場)」と呼(よ)ばれる空間が注目(ちゅうもく)されています。大学が図書館(としょかん)の新たな機能(きのう)として構内(こうない)に設置(せっち)しているところもあれば、最近(さいきん)では公共(こうきょう)図書館にもみられます。なぜでしょうか。 (福沢英里(ふくざわえり))

 南山(なんざん)大(名古屋(なごや)市昭和区(しょうわく))のキャンパスでは、昨年(さくねん)4月に開設(かいせつ)された研究(けんきゅう)・教室棟(きょうしつとう)にあるラーニングコモンズが学生たちに人気です。夏休み前の7月中旬(ちゅうじゅん)、総合政策学部(そうごうせいさくがくぶ)3年生の4人がパソコンを持(も)ち込(こ)み、企業(きぎょう)の地球環境(ちきゅうかんきょう)への配慮(はいりょ)について意見(いけん)を出し合っていました。

 ラーニングコモンズとは、新聞や本などの印刷物(いんさつぶつ)、インターネットといった複数(ふくすう)の媒体(ばいたい)から情報(じょうほう)を得(え)て、それを基(もと)に議論(ぎろん)を深(ふか)め学べる場のこと。無線LAN(むせんラン)やプリンターが整備(せいび)され、パソコン設備やプロジェクター、電子黒板(でんしこくばん)などが使(つか)えます。資料(しりょう)の探(さが)し方や論文(ろんぶん)の書き方などをアドバイスしてくれる専門職員(せんもんしょくいん)が常駐(じょうちゅう)する大学もあります。静(しず)かな図書館(としょかん)にあっても会話はOK(オーケー)。ゼミの発表準備(はっぴょうじゅんび)やリポート作成(さくせい)など、学生が集(あつ)まって相談(そうだん)しながら学習(がくしゅう)を進(すす)めるには最適(さいてき)な空間です。

 発祥(はっしょう)はアメリカの大学図書館。25年ほど前、学生の図書館離(ばな)れを食い止めようと設(もう)けられました。日本では文部科学省(もんぶかがくしょう)が「アクティブ・ラーニング・スペース」と呼(よ)び、アメリカ同様(どうよう)、大学の図書館を中心に増(ふ)えています=グラフ。2017年度(ねんど)の調(しら)べでは、全国(ぜんこく)の大学の65・4%にあたる512校にあります。森山幹弘(もりやまみきひろ)・南山大国際教養(こくさいきょうよう)学部教授(きょうじゅ)は「教員が一方的(いっぽうてき)に話すスタイルから、学生が議論を通じて互(たが)いに学び合う形に変(か)わってきている」と背景(はいけい)を指摘(してき)します。

 南山大も12年に始(はじ)めたときは、図書館の中にある部屋を活用しました。使い勝手(がって)を考え、国際教養学部の新設などに合わせて、新棟の2階約(かいやく)700平方(へいほう)メートルをラーニングコモンズ専用に。図書館の外に設けるのは最近の流(なが)れです。

 学生は上手に使い分けています。国際教養学部1年の荒古千広(あらこちひろ)さんは「図書館にある本や資料を使って静かに勉強(べんきょう)したいときは図書館で。集中(しゅうちゅう)して友達(ともだち)と作業(さぎょう)したいときは新しい施設(しせつ)に行きます」。同大学長室企画渉外係長(きかくしょうがいかかりちょう)の山口洋平(やまぐちようへい)さんは「1、2年生の多くは授業が終(お)わると帰ってしまう。学生の居場所(いばしょ)として、交流(こうりゅう)や仲間(なかま)づくりの場にもなれば」と期待(きたい)しています。

 公共図書館(こうきょうとしょかん)にも影響(えいきょう)を与(あた)えています。名古屋(なごや)市の愛知県(あいちけん)図書館は天井(てんじょう)の耐震工事(たいしんこうじ)に合わせ、1階(かい)入り口近くを改装(かいそう)。今年3月中旬(ちゅうじゅん)、市民(しみん)が集(つど)い学んだり、交流(こうりゅう)したりできるスペース「Yotteko(ヨッテコ)」を設(もう)けました。

 雑談(ざつだん)もでき、自由(じゆう)に使(つか)える学習(がくしゅう)スペースや、長机(ながづくえ)が置(お)かれたレクチャーコーナーも。夏休み中は子ども向(む)けイベントの会場に使われ、子どもたちが司書(ししょ)に教わりながら、紙コップと菜箸(さいばし)を使った一本弦(げん)のギター作りに挑戦(ちょうせん)していました。活字離(かつじばな)れが指摘(してき)されている中、1日2000人前後が利用(りよう)する同図書館。愛知芸術文化(げいじゅつぶんか)センター愛知県図書館総務課(そうむか)の米井勝一郎(よねいかついちろう)さんは「集客力(しゅうきゃくりょく)を生かし、市民が気軽(きがる)に集(あつ)まり、つながりをつくっていける場所(ばしょ)にしたい」と意欲(いよく)を見せます。

 3年後をめどに、「まちなか図書館」をつくる計画を進(すす)めるのは愛知県豊橋(とよはし)市。図書館で得(え)た知識(ちしき)や人との出会いを町づくりや起業(きぎょう)など、社会に還元(かんげん)してもらえるような場にして、町の発展(はってん)につなげたいとの願(ねが)いを込(こ)めています。

 ただ、公共図書館には静(しず)かに本を読みたい人も来ますよね。愛知県図書館では3、4階に静かに過(す)ごす場所を用意(ようい)し、すみ分けを明確(めいかく)にしています。豊橋市まちなか活性(かっせい)課の伊藤紀治(いとうとしはる)課長は「これからの図書館は活発(かっぱつ)な議論(ぎろん)をする場という啓発(けいはつ)にも努(つと)めたい」と周知(しゅうち)に力を入れます。

半個室(はんこしつ)のような空間で、ゼミの発表準備(はっぴょうじゅんび)のため、パソコンを持(も)ち寄(よ)って作業(さぎょう)する学生=名古屋(なごや)市昭和区(しょうわく)の南山(なんざん)大で

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