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知るコレ!

人類初登頂へ大冒険 ヒマラヤの未踏峰登山

パンカールヒマールを初登頂(はつとうちょう)した第(だい)3次(じ)ヒマラヤキャンプ隊(たい)。右から2人目が花谷(はなたに)さん(花谷さん提供(ていきょう))

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 日本で約(やく)1000万人が楽しんでいるという登山(とざん)。11日は山の日でしたね。中でも登山家らにとって最大(さいだい)の達成感(たっせいかん)を得(え)られるのが、誰(だれ)も登(のぼ)ったことのない山、「未踏峰(みとうほう)」の頂(いただき)をめざすこと。今、世界(せかい)の登山家が集(あつ)まるヒマラヤ山脈(さんみゃく)で、未踏峰登山が盛(も)り上がっています。 (宮崎厚志(みやざきあつし))

 「今の世(よ)の中で一番ぜいたくなことは、情報(じょうほう)がない状態(じょうたい)に身(み)を置(お)くことです」。そう話すのは、登山家(とざんか)の花谷泰広(はなたにやすひろ)さん(42)です。大規模(だいきぼ)な遠征隊(えんせいたい)から少人数で氷(こおり)や岩を登攀(とうはん)するアルパインクライミングまで、さまざまなヒマラヤ登山の経験(けいけん)を持(も)つ実力派(じつりょくは)。「ヒマラヤ登山の魅力(みりょく)や技術(ぎじゅつ)を伝(つた)えたい」と、2015年から20代(だい)の登山者(しゃ)を選抜(せんばつ)して未踏峰(みとうほう)に挑(いど)む「ヒマラヤキャンプ」を主宰(しゅさい)しています。

 プロジェクトのきっかけは、14年にネパール政府(せいふ)がヒマラヤの未踏峰百四座(ざ)への登頂(とうちょう)を解禁(かいきん)したこと。中国(ちゅうごく)との国境(こっきょう)にある山が多く、難易度(なんいど)はさまざまです。写真(しゃしん)も少なく、どんな山なのか地図上から推測(すいそく)はできても、実際(じっさい)に行ってみるまではわかりません。情報を集(あつ)めて登(のぼ)る山を決(き)め、ルートは偵察(ていさつ)しながら決定(けってい)。こうした冒険性(ぼうけんせい)に、登山本来の面白(おもしろ)さが詰(つ)まっています。

 今年4月、第(だい)3次(じ)ヒマラヤキャンプ隊はパンカールヒマール(6,264メートル)をめざしました。花谷さんは先頭に立たず、女性(じょせい)1人を含(ふく)む5人の隊員(たいいん)の判断(はんだん)で進(すす)みます。しかし、山頂を前に立ちはだかったのは急(きゅう)な傾斜(けいしゃ)の氷河(ひょうが)。しかも割(わ)れ目が連続(れんぞく)するクレバス帯(たい)です。花谷さんは「全員(ぜんいん)の突破(とっぱ)は厳(きび)しい」と言い渡(わた)しました。

 全員登頂をめざしていた隊員は悩(なや)みます。結論(けつろん)は、麓(ふもと)近くまで一度下ってからの、別(べつ)ルートでのアタックでした。残(のこ)り日数は少なく、偵察なしの一発勝負(いっぱつしょうぶ)。核心部(かくしんぶ)となる氷河のクライミングも隊員が助(たす)け合って登り切り、5月8日、ついに全員登頂に成功(せいこう)しました。「私(わたし)に頼(たよ)らず自分たちの力で未踏峰に登り切った今回は、過去(かこ)2回より達成感(たっせいかん)が大きかったのでは」と花谷さんは分析(ぶんせき)します。

 岐阜県羽島(ぎふけんはしま)市の会社員、吉川拓矢(よしかわたくや)さん(29)は、16年の第2次に1カ月半の休暇(きゅうか)を取(と)って参加(さんか)し、ロールワリンカン(6,664メートル)に登頂しました。「ヒマラヤはずっと憧(あこが)れでしたが、未踏峰でなければ行っていなかったと思います」。人類史上誰(じんるいしじょうだれ)も踏(ふ)んだことのない頂(いただき)を自分が初(はじ)めて踏みしめる−。そんなチャンスがまだまだ残されているのです。

 ヒマラヤで未踏峰登山(みとうほうとざん)とは対照的(たいしょうてき)な存在(そんざい)が、エベレスト(8,848メートル)登山です。初登頂(はつとうちょう)から65年たった現在(げんざい)、通算5000人以上(いじょう)が登(のぼ)り日本人も240人以上。最年少(さいねんしょう)は13歳(さい)です。年間登山者数(しゃすう)は毎年のように過去(かこ)最多を更新(こうしん)し、今年は春シーズンだけで34隊(たい)326人(うち日本人16人)と、それ以上のネパール人の山岳(さんがく)ガイド(シェルパ)が登頂しています。

 その背景(はいけい)にあるのは、国際(こくさい)山岳ガイドの資格(しかく)を持(も)つリーダーに率(ひき)いられるツアー登山が広まったことです。荷物運(にもつはこ)びや安全(あんぜん)なルート作りをシェルパに任(まか)せるため、参加(さんか)者に必要(ひつよう)な登山技術(ぎじゅつ)の難易度(なんいど)は大きく低下(ていか)。花谷(はなたに)さんによるとツアー料金(りょうきん)は下がり続(つづ)け、最安値(さいやすね)は現地(げんち)の会社によるツアーで3万2000ドル(約(やく)355万円)。好天(こうてん)の日のルート上は登山者で大行列(だいぎょうれつ)になるといいます。同時にごみ問題(もんだい)やシェルパの不足(ふそく)も深刻化(しんこくか)しています。

 それほどまでに世界(せかい)最高峰への憧(あこが)れは強いのです。ただ、花谷さんは「ヒマラヤ=エベレストではなく、他(ほか)にも多くの素晴(すば)らしい山があります」と強調(きょうちょう)します。登山の価値(かち)は「高さ」だけではなく、「難(むずか)しさ」や「未知(みち)」「自力」といった要素(ようそ)も。これらを総合(そうごう)的に考えることで、自分らしい登山が見えてくるかもしれません。

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