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知るコレ!

脚の一部が多様に進化 カニのはさみ

さまざまなカニの標本(ひょうほん)が展示(てんじ)されている特別(とくべつ)展=いずれも名古屋(なごや)市千種区(ちくさく)の名古屋大博物館(はくぶつかん)で

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 磯(いそ)や砂浜(すなはま)、深(ふか)い海の底(そこ)まで、さまざまなところにすむカニの仲間(なかま)。そのはさみは、それぞれの生活に合わせた、多種多様(たしゅたよう)な形をしています。海水浴(かいすいよく)などで海に行く機会(きかい)が増(ふ)える夏、その奥深(おくぶか)い世界(せかい)を見てみましょう。 (佐橋大(さはしひろし))

 名古屋(なごや)市千種区(ちくさく)の名古屋大博物館(はくぶつかん)では、10月20日まで、カニやカニの仲間(なかま)のはさみをテーマにした特別展(とくべつてん)「カニコレ’18〜カニのハサミは使(つか)いよう〜」が開(ひら)かれています。その中のカニに着目(ちゃくもく)すると、約(やく)70種(しゅ)のカニの殻(から)を樹脂(じゅし)で加工(かこう)した標本(ひょうほん)などが並(なら)んでいます。

 甲羅(こうら)の横幅(よこはば)が30センチ以上(いじょう)ある巨大(きょだい)な「タスマニアオオガニ」や、雄(おす)の左右のはさみの大きさがまったく違(ちが)う「シオマネキ」、ずんぐりした姿(すがた)の「アサヒガニ」、長いひょろひょろの脚(あし)を持(も)つカニなどが目を引きます。10年前に全世界(ぜんせかい)で確認(かくにん)されたカニの種類(しゅるい)は約6800といい、展示(てんじ)されているのはごく一部(いちぶ)ですが、さまざまな形をしていることに気付(きづ)かされます。

 カニはすべての種類がはさみを持っています。脚の一部が変化(へんか)してできたのです。中でも、特(とく)に強いはさみを持っているのが「トラフカラッパ」です。東京湾(とうきょうわん)より南の浅(あさ)い砂(すな)の海にすみ、貝の殻をはさみで割(わ)って、中身(なかみ)を食べます。堅(かた)い貝殻(かいがら)を割るために力強いはさみが必要(ひつよう)なのです。

 カニは生き方に合わせて、はさみを進化(しんか)させてきました。砂浜(すなはま)にすむシオマネキは、泥(どろ)に付(つ)いたプランクトンを食べます。小さいはさみを閉(と)じるとスプーンのような形になり、これで泥をすくうのです。雄の大きなはさみは、雌(めす)へのアピールに使うもので、それほど強くありません。

 魚などを捕(つか)まえて食べるカニのはさみには、つかんだ獲物(えもの)を逃(のが)さないように、はさみの内側(うちがわ)にギザギザが付いています。名古屋大博物館講師(こうし)の藤原慎一(ふじわらしんいち)さん(38)は「はさみの機能(きのう)が多様化(たようか)することで、カニの仲間はさまざまな環境(かんきょう)に適応(てきおう)してきたと考えられます」と話します。

 カニがはさみを動(うご)かす仕組(しく)みを知っていますか? 図を見てください、はさみを動かすのは「腱(けん)」と「筋肉(きんにく)」です。

 みなさん、ズワイガニなどのはさみ(爪(つめ))を食べると、中から、ひも状(じょう)や板(いた)状の物(もの)が出てきますよね、それが腱です。腱とカニの殻(から)を結(むす)ぶ筋肉が収縮(しゅうしゅく)することで、はさみが開閉(かいへい)します。

 はさみが物をはさむ力の強弱は、その形によって決(き)まります。力が出せるはさみは、長さに比(くら)べて、その付(つ)け根部分(ねぶぶん)が分厚(ぶあつ)い形をしています。筋肉が発達(はったつ)し、「てこの原理」で、効率(こうりつ)よく力が伝(つた)わるためです。例(たと)えば、太くて短(みじか)いトラフカラッパのはさみは、その典型(てんけい)です。一方、シオマネキのはさみは、長さに比べて、付け根の厚みがなく、はさむ力は弱いのです。

 はさみの形がどんなに違(ちが)っていても、その付け根の厚さと横幅(よこはば)の比率(ひりつ)は、どのカニも大きく変(か)わらないことも分かってきました。

 藤原(ふじわら)さんが、カニやヤドカリなどはさみを持(も)つ甲殻類(こうかくるい)92種(しゅ)を調(しら)べたところ、付け根が厚いはさみは横幅も十分にあり、壊(こわ)れにくさも兼(か)ね備(そな)えていて、逆(ぎゃく)に、シオマネキのような、はさむ力の弱いはさみは、幅もなく、関節(かんせつ)が外れやすい構造(こうぞう)になっていたのです。

 「はさみの外見や機能(きのう)がどんなに多様化(たようか)しても、実(じつ)は、基本(きほん)の形のデザインがあります。そこからのわずかな形の違いが、はさみの役割(やくわり)に大きな違いをもたらしています」と藤原さんは説明(せつめい)します。

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