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知るコレ!

寝不足続くと心身に負担 睡眠負債

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 梅雨(つゆ)が明けたら、寝苦(ねぐる)しい夜がやって来ますね。寝不足(ねぶそく)が続(つづ)くと「睡眠負債(すいみんふさい)」という状態(じょうたい)に陥(おちい)る可能性(かのうせい)があります。夏休みを元気に過(す)ごすためにも、自分の睡眠の習慣(しゅうかん)を見直してみましょう。 (福沢英里(ふくざわえり))

 昼間、目を開(あ)けていられないほど眠(ねむ)くなる▼電車に乗(の)るとすぐ眠れる▼夜、布団(ふとん)に入るとすぐ眠れる−。一つでも当てはまる大人は要注意(ようちゅうい)。睡眠(すいみん)時間が足りていないのかもしれません。

 睡眠不足(ぶそく)が借金(しゃっきん)のようにたまり、病気(びょうき)から体を守(まも)る免疫機能(めんえききのう)が低下(ていか)したり、うつ状態(じょうたい)を招(まね)いたりと、心と体に悪影響(あくえいきょう)が出ている状態を「睡眠負債(ふさい)」といいます。集中力(しゅうちゅうりょく)が下がり、勉強(べんきょう)や仕事(しごと)もはかどりません。

 寝不足(ねぶそく)が続(つづ)くと、高血圧(こうけつあつ)やがんなどの病気にかかるリスクを高めます。最近(さいきん)の研究(けんきゅう)では認知症(にんちしょう)との関連(かんれん)も明らかになっています。アルツハイマー型(がた)認知症の原因物質(げんいんぶっしつ)で「アミロイドβ(ベータ)」と呼(よ)ばれる、脳(のう)の神経細胞(しんけいさいぼう)から出る老廃物(ろうはいぶつ)が、脳から排出(はいしゅつ)されずにたまりやすくなるそうです。認知症は七十歳(さい)ごろから発症(はっしょう)が増(ふ)えるといわれますが、予防(よぼう)には若(わか)いうちから睡眠を取(と)ることを心がけねばなりません。

 ところが日本人の睡眠時間は短(みじか)くなっています。NHK放送文化(エヌエイチケイほうそうぶんか)研究所(じょ)の調(しら)べでは、一九八五年の七時間四十三分(平日(へいじつ))から減少(げんしょう)。経済協力開発機構(けいざいきょうりょくかいはつきこう)(OECD(オーイーシーディー))の調査(ちょうさ)でも、日本人の平均(へいきん)睡眠時間は七時間二十二分(二〇一六年)と加盟国(かめいこく)で最(もっと)も短く、加盟国平均の八時間二十五分より約(やく)一時間も少ないのです。

 では、必要(ひつよう)な睡眠時間とは本来、どれぐらいなのでしょうか。国立精神(せいしん)・神経医療(いりょう)研究センター(東京都小平(とうきょうとこだいら)市)の三島和夫部長(みしまかずおぶちょう)らのチームが一昨年(いっさくねん)、こんな実験(じっけん)をしました。「自分はよく眠れている」という二十代(だい)の健康(けんこう)な男性(だんせい)十五人に、光や音が入らない部屋で九日間、寝てもらいました。十五人は日頃(ひごろ)、平均七時間二十二分寝ています。眠れなくても十二時間はその部屋にいる約束(やくそく)です。

 初日(しょにち)は平均十時間以上(いじょう)眠りましたが、少しずつ短くなり、平均すると八時間二十五分に。三島さんはこれを「必要睡眠時間」と考え、普段(ふだん)の睡眠時間との差(さ)である約一時間を「隠(かく)れた睡眠不足」とみなしました。

 実験の前後で血液検査(けつえきけんさ)を行い、ストレスにかかわるホルモンなど五種類(しゅるい)の数値(すうち)が改善(かいぜん)されたことも分かりました。子どもも同じ結果(けっか)になるかは、同様(どうよう)に調べてみないと分かりませんが、三島さんは「睡眠不足の自覚(じかく)がなくても、心身(しんしん)に負担(ふたん)をかけている可能性(かのうせい)がある」と注意を呼びかけます。

 なんだ、睡眠(すいみん)は大人の問題(もんだい)だと思ったら、そうではありません。文部科学省(もんぶかがくしょう)の二〇一四年度(ねんど)の調査(ちょうさ)によれば、睡眠時間が「十分ではない」と感(かん)じる小学生は14・9%なのに対(たい)し、中学生は24・8%に上昇(じょうしょう)します。上のグラフは、中学校に上がると不登校(ふとうこう)の生徒数(せいとすう)がぐっと増(ふ)えることを表(あらわ)します。

 この現象(げんしょう)に着目(ちゃくもく)したのはNPO法人(エヌピーオーほうじん)「里豊夢(りほうむ)わかさ」(福井県若狭(ふくいけんわかさ)町)の前田勉理事長(まえだつとむりじちょう)。小学校の校長時代(じだい)、中学校に通えなくなる卒業生(そつぎょうせい)が気になっていました。寝(ね)る時間が遅(おそ)くなって睡眠が十分でないと「朝起(お)きられない」「体調が悪(わる)い」などで不登校につながることを知り、若狭町内の小中学校で〇七年度から睡眠時間を調(しら)べ始(はじ)めました。就寝(しゅうしん)時間が遅かったり、睡眠時間にばらつきがあったりする児童(じどう)や生徒には、保護者(ほごしゃ)も一緒(いっしょ)に面談(めんだん)を重(かさ)ね、五年後には卒業生の不登校がなくなったそうです。

 前田さんによれば、小学校低学年(ていがくねん)は十時間半、中学年は九時間半、高学年は九時間が睡眠時間の目安(めやす)。昼間に眠気(ねむけ)を感じるなら、午後三時までに三十分以内(いない)の昼寝を取(と)り入れてみましょう。宮城(みやぎ)県大和(たいわ)町の吉岡(よしおか)小学校は四年前から、給食(きゅうしょく)と掃除(そうじ)を終(お)えた午後一時十五分から十五分間、モーツァルトの音楽を流(なが)して仮眠(かみん)を取る「午睡タイム」を設(もう)けています。午後から落(お)ち着(つ)いて活動(かつどう)でき、体調不良(ふりょう)を訴(うった)えたり、けがをしたりする児童が減少(げんしょう)。大人も子どもも睡眠が昼間の活力につながることを意識(いしき)したいですね。

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