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知るコレ!

叱られる 意図理解し受け止める

 「今の若(わか)い人は、ちょっと叱(しか)るとすぐへこたれる」などと聞くことがあります。「叱られた経験(けいけん)が少ないんだ」とも。実際(じっさい)はどうなのでしょうか。新年度(しんねんど)の慌(あわ)ただしさも一段落(いちだんらく)し、人間関係(かんけい)などで悩(なや)んでいる人もいるかもしれません。実態(じったい)や対処法(たいしょほう)を取材(しゅざい)しました。 (辻紗貴子(つじさきこ))

野球(やきゅう)の技術指導(ぎじゅつしどう)を受(う)ける子どもたち=愛知県尾張旭(あいちけんおわりあさひ)市の屋内練習場(おくないれんしゅうじょう)で

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 「よしっ、いいぞ」。愛知県尾張旭(あいちけんおわりあさひ)市にある野球(やきゅう)の屋内練習場(おくないれんしゅうじょう)で、小中学生が大人とキャッチボールをしていました。コーチらは、よくできたところを褒(ほ)め、改善点(かいぜんてん)を助言(じょげん)します。

 技術指導(ぎじゅつしどう)などをしているNPO法人(エヌピーオーほうじん)「名古屋TLC(なごやティーエルシー)スポーツアカデミー」の虫賀千修理事長(むしがかずのぶりじちょう)(45)は「子どもが萎縮(いしゅく)しないよう技術的(てき)なミスは責(せ)めません。ただすべて自由(じゆう)にさせるのではなく、人の話を聞く姿勢(しせい)などはしっかり教えます」と話します。「今の子はなぜ叱(しか)られているのかを理解(りかい)させないとだめ。厳(きび)しさが美徳(びとく)とされたわれわれが育(そだ)ったやり方は通用しません」

 練習に通う小学4年の男子(9つ)は「悪(わる)いことをしたら怒(おこ)ってもらう方がいい」。厳しい指導も意図(いと)が分かれば、「強くなれる気がする」と前向(まえむ)きに受(う)け止めるといいます。

 叱り方は変(か)わってきたようですが、「子どもたちが保護者(ほごしゃ)に叱られる頻度(ひんど)は変わっていません」とベネッセ教育総合研究所(きょういくそうごうけんきゅうじょ)(東京都(とうきょうと))の木村治生主席(きむらはるおしゅせき)研究員(いん)は指摘(してき)します。

 小中高校生とその保護者1万5000組を対象(たいしょう)に2017年に実施(じっし)した東京大との共同調査(きょうどうちょうさ)によると、約(やく)95%の保護者が「悪いことをした時に叱る」と回答。1981年以降(いこう)の他(ほか)の調査を見ても数字に大きな変化(へんか)はないそうです。教員も、全国(ぜんこく)の小学校で1500人に尋(たず)ねた2015年の調査で、92%が「叱っている」と答えています。

 ではなぜ、叱り方が変わってきたのでしょう。

 「最近(さいきん)は、厳しく叱り過(す)ぎると問題(もんだい)になる。学校の先生たちはかなり配慮(はいりょ)するようになっていると思います」と木村さんは分析(ぶんせき)します。さらに、「親も多くが核家族(かくかぞく)で育ったり地域(ちいき)との関(かか)わりが薄(うす)れたりして多様(たよう)な人から叱られる機会(きかい)が減(へ)り、叱り方が下手になっているのかもしれません。子どもたちも、生の感情(かんじょう)をぶつけ合う場面(ばめん)が少なくなっていそうです」。

 ただ、まだ全国の小中高校、特別支援(とくべつしえん)学校などで年間計800件超(けんちょう)の体罰(たいばつ)が報告(ほうこく)されます(16年度(ねんど)、文部科学省(もんぶかがくしょう))。理不尽(りふじん)な指導や叱られ方をされたら、「逃(に)げる道もありますよ」と木村さんはアドバイスします。

 こうした環境(かんきょう)で育(そだ)った子どもたちが、就職先(しゅうしょくさき)やアルバイト先などで激(はげ)しく叱(しか)られ、大きなショックを受(う)けることもあります。落語家(らくごか)の桂福丸(かつらふくまる)さんは著書(ちょしょ)「怒(おこ)られ力」で、叱られる経験(けいけん)を前向(まえむ)きな力にしていく考え方を紹介(しょうかい)しています。

 そもそもなぜ人は「叱られること」を嫌(いや)だと感(かん)じるのでしょう? 「理由(りゆう)が分からないときや共通(きょうつう)の価値観(かちかん)という土台がない場合、ただの攻撃(こうげき)にしか感じられないからでは」と桂さん。「でも、人がいつもちゃんとした理由で叱るかいうと、残念(ざんねん)ながらむしろそうでないことの方が多い。単(たん)に機嫌(きげん)が悪(わる)いとか。それを知っておいた方がいい」と前置(まえお)きします。

 叱られる回数を減(へ)らすためには、まず叱られたことを毎日すべて書き出してリストにすることを勧(すす)めます。「何回も言われていることがあれば意識化(いしきか)することで改善(かいぜん)しやすくなります」

 次(つぎ)のステップは、休憩(きゅうけい)時間など、叱られた相手(あいて)に余裕(よゆう)がある時に、その件(けん)について質問(しつもん)すること。「大抵(たいてい)の人は後輩(こうはい)や新人からそうされて嫌な気はしませんし、自分のやる気も見せられる。こうしたやりとりを繰(く)り返(かえ)すことで人間関係(かんけい)ができるんです」。「今の時代(じだい)は転職(てんしょく)しても全然問題(ぜんぜんもんだい)ない。ただ、何事(なにごと)もある程度続(ていどつづ)けてこそ面白(おもしろ)さが分かるという面(めん)もあります」

 それでもつらい時は? 「生で一流(いちりゅう)の落語を聞いたり舞台(ぶたい)を見たりするのがお勧め。その世界(せかい)にどっぷりつかって脳(のう)をリセットすると驚(おどろ)くほど体が軽(かる)なります。いや、宣伝(せんでん)やないですよ」

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