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知るコレ!

「色」で温暖化とらえる 気候変動観測衛星 「しきさい」

「しきさい」の模型(もけい)=茨城県(いばらきけん)のJAXA筑波宇宙(ジャクサつくばうちゅう)センターで

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 もうすぐ七夕(たなばた)。無数(むすう)の星がきらめく夜空には、人間が打(う)ち上げた人工衛星(じんこうえいせい)もたくさんあります。なかでも今、世界中(せかいじゅう)から注目(ちゅうもく)を集(あつ)めているのが、気候変動観測(きこうへんどうかんそく)衛星「しきさい」です。取得(しゅとく)したデータから作られる美(うつく)しい画像(がぞう)が目を引き、地球温暖化(ちきゅうおんだんか)の進行(しんこう)を予測(よそく)するという重要(じゅうよう)な任務(にんむ)を背負(せお)っています。 (宮崎厚志(みやざきあつし))

 「しきさい」はその名の通り、色を見分ける人工衛星(じんこうえいせい)です。人間の目には見えない赤外線なども含(ふく)めた19種類(しゅるい)の波長(はちょう)を識別(しきべつ)する「多波長光学放射計(ほうしゃけい)」というセンサーを搭載(とうさい)し、普通(ふつう)のカメラでは写(うつ)せない地球(ちきゅう)のさまざまな姿(すがた)を浮(う)かび上がらせます。物(もの)に色があるのは、物が光を受(う)けたときに特定(とくてい)の波長の光だけを反射(はんしゃ)し、その反射した波長を人が色として感(かん)じるから。しきさいは波長の反射を観測(かんそく)してデータ化(か)。地上にいるスタッフが、そのデータを色に置(お)き換(か)えて鮮(あざや)やかな画像(がぞう)にして見せるのです。

 「驚(おどろ)きましたよ。ものすごくきれいだなって。その瞬間(しゅんかん)、これは使(つか)えると思いました」。そう語るのは宇宙航空研究開発機構(うちゅうこうくうけんきゅうかいはつきこう)(JAXA(ジャクサ))のプロジェクトマネジャー、杢野正明(もくのまさあき)さん(53)。昨年(さくねん)12月23日に鹿児島県(かごしまけん)の種子島(たねがしま)宇宙センターからH2A(エイチツーエー)ロケットに載(の)せて打(う)ち上げられたしきさいが、初(はじ)めて元旦(がんたん)に取得(しゅとく)した画像を見た印象(いんしょう)です。初(はつ)画像は初日の出を浴(あ)びるカムチャツカ半島(はんとう)(ロシア)で、その後も次々(つぎつぎ)に美(うつく)しい地球を映(うつ)し出しました。

 しきさいは、地球環境(かんきょう)の変動(へんどう)を長期的(ちょうきてき)に観測するJAXAの「GCOM(ジーコム)プロジェクト」の中核(ちゅうかく)を担(にな)う人工衛星です。特に、21世紀末(せいきまつ)の気温上昇(きおんじょうしょう)の予測(よそく)には現在(げんざい)2度以上(どいじょう)もの開(ひら)きがあり、予測を正確(せいかく)にするために必要(ひつよう)な2つの要素(ようそ)の解明(かいめい)を期待(きたい)されています。ひとつは大気中のちりや微粒子(びりゅうし)の変化(へんか)や量(りょう)を観測し、それらがどの程度地表(ていどちひょう)に届(とど)く太陽光(たいようこう)を遮(さえぎ)っているかを調(しら)べること。もうひとつは光合成(こうごうせい)をする植物(しょくぶつ)の葉(は)の総面積(そうめんせき)を測(はか)ることで、植物による二酸化炭素吸収(にさんかたんそきゅうしゅう)量を高い精度(せいど)で推定(すいてい)することです。

 本体が2トントラックほどの大きさで、高度798キロで北極(ほっきょく)と南極を結(むす)ぶように地球を周回(しゅうかい)。センサーの観測幅(はば)は最大(さいだい)1400キロと非常(ひじょう)に広く、地球をおよそ2日でくまなく観測できます。それでいて、250メートル四方という細かい単位(たんい)で分析(ぶんせき)できる世界(せかい)最高水準(すいじゅん)の能力(のうりょく)により、日本列島(れっとう)の赤潮(あかしお)、黄砂(こうさ)、流氷(りゅうひょう)なども観測。私(わたし)たちの生活や漁業(ぎょぎょう)にも役立(やくだ)てられます。

 取得したデータや画像は公開(こうかい)され、世界中の研究機関(きかん)で活用されます。「計測器(けいそくき)としてきちんと役立つものに仕上(しあ)げていきたい」と杢野さん。現在の地球の姿を彩(いろど)り豊(ゆた)かに示(しめ)しながら、未来(みらい)を見通していきます。

 しきさいはJAXA(ジャクサ)が運用(うんよう)する3つの地球環境観測衛星(ちきゅうかんきょうかんそくえいせい)の1つです。他(ほか)は2009年打(う)ち上げの温室効果(おんしつこうか)ガス観測技術(ぎじゅつ)衛星「いぶき」と12年打ち上げの水循環変動(じゅんかんへんどう)観測衛星「しずく」。いぶきは大気中の二酸化炭素量(にさんかたんそりょう)を、しずくは降水(こうすい)量、水蒸気(すいじょうき)量、積雪(せきせつ)などを計測し、これらを組み合わせて高精度(こうせいど)の気候(きこう)変動予測(よそく)を目指(めざ)しています。

 日本初(はつ)の人工衛星は1970年に旧宇宙科学研究所(きゅううちゅうかがくけんきゅうじょ)が打ち上げた試験(しけん)衛星の「おおすみ」。以後(いご)、日本では100機(き)以上も打ち上げられてきました。天気予報(よほう)で有名(ゆうめい)な静止気象(せいしきしょう)衛星「ひまわり」は3万6000キロもの高度にあり、現在(げんざい)8号(ごう)と9号が運用されています。

 国連(こくれん)宇宙部(ぶ)によると世界(せかい)で打ち上げられた人工衛星は約(やく)7600機以上。地上で回収(かいしゅう)されたものや落下(らっか)したものを除(のぞ)くと、約4400機以上が宇宙空間で軌道上(きどうじょう)を周回(しゅうかい)しています。一方で故障(こしょう)・老朽化(ろうきゅうか)した人工衛星が宇宙に残(のこ)ってごみになる「スペースデブリ」の問題(もんだい)も起(お)き、しきさいがいる高度800キロ前後の低(てい)軌道は特(とく)に混雑(こんざつ)しています。

関東(かんとう)−近畿(きんき)地方の植生(しょくせい)の活動度(かつどうど)を可視化(かしか)した画像(がぞう)。白は積雪域(せきせついき)(JAXA提供(ジャクサていきょう))

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