トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

恵みも豪雨ももたらす 梅雨

梅雨入(つゆい)り前に田植(たう)えをする服部(はっとり)さん=名古屋(なごや)市中川区(なかがわく)で

写真

 「6月6日ごろ、東海(とうかい)地方は梅雨入(つゆい)りしたとみられる」。名古屋(なごや)地方気象台(きしょうだい)が6日に発表(はっぴょう)しました。どうして、そんなモヤッとする言い方なのでしょう。そんな疑問(ぎもん)から梅雨が起(お)こる仕組(しく)み、最近(さいきん)の傾向(けいこう)まで調(しら)べてみました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 「梅雨(つゆ)とは、春と夏の間で曇(くも)りや雨の日が多い季節(きせつ)のこと」。五月下旬(げじゅん)、名古屋(なごや)地方気象台(きしょうだい)を訪(たず)ねると予報官(よほうかん)の斉藤清(さいとうきよし)さん(61)が教えてくれました。では梅雨入りはどう決(き)まるの?と尋(たず)ねると、大まじめに「毎日悩(なや)んでいます」。

 斉藤さんは長期(ちょうき)の天気予報の担当(たんとう)で、東海(とうかい)地方の梅雨入りの時期を決める責任者(せきにんしゃ)。毎年五月になると、日々の天気や週間天気予報を見ながら考え始(はじ)めます。

 難(むずか)しいのは、桜(さくら)の開花(かいか)や木枯(こが)らし1号(ごう)のような観測事実(かんそくじじつ)の発表(はっぴょう)と違(ちが)って、梅雨入り情報(じょうほう)は予報であること。だからこそ「梅雨入りしたとみられる」と発表します。「雨の季節になるので大雨や洪水(こうずい)に備(そな)えて」と伝(つた)える意味(いみ)があるからです。

 「梅雨入り後、予報に反(はん)して晴れて、頭を抱(かか)えることもありますよ」。今年は五月下旬に梅雨入りとしようか悩んだ末(すえ)、大阪(おおさか)や東京(とうきょう)の気象台とも相談(そうだん)しながら六月六日としたそうです。

 確定(かくてい)するのは九月一日。六〜八月の天気や雲、雨量(うりょう)などのデータを基(もと)に、予報が見直されます。平年(へいねん)の東海地方の梅雨は、六月八日〜七月二十一日ごろです。

 では、なぜ梅雨は起(お)こるのでしょう。日本気象協会(きょうかい)の気象予報士(し)、北村泰宏(きたむらやすひろ)さん(67)によると、始まりは春から夏にかけ、インドのベンガル湾方面(わんほうめん)から東南(とうなん)アジアに吹(ふ)く季節風。この風で高温多湿(こうおんたしつ)の空気が流(なが)れ込(こ)み、五月後半に東南アジアで雨期がスタート。そのころ、日本の南側(みなみがわ)でも太平洋高気圧(たいへいようこうきあつ)が強まり、高温多湿の気団(きだん)(ほぼ同じ性質(せいしつ)の空気の塊(かたまり))が北上してきます。

 一方、大陸(たいりく)では日射(にっしゃ)の強まりで暖(あたた)かく乾(かわ)いた気団が生まれ、気団の境界(きょうかい)に梅雨前線(ばいうぜんせん)ができます。この周辺(しゅうへん)で、東南アジア方面からの水蒸気(すいじょうき)を大量に含(ふく)んだ空気が上昇気流(じょうしょうきりゅう)で押(お)し上げられて雨(=梅雨)に。六月にはオホーツク海高気圧ができて冷(つめ)たく湿(しめ)った気団が生まれ、その影響(えいきょう)で、さらに前線が明瞭(めいりょう)になります。太平洋高気圧が強まると前線は北に移動(いどう)し、北海道(ほっかいどう)あたりで気団の差(さ)がなくなると消(き)えます。「梅雨のおかげで、日本を含めたアジアは、世界(せかい)で有数(ゆうすう)の稲作地帯(いなさくちたい)なんですよ」と北村さんは話しました。

 「田植(たう)えは梅雨(つゆ)に決(き)まっとったがね。昔(むかし)は六月半ばの三、四日間、田植えを手伝(てつだ)えるように小学校が休みになった」と話すのは、名古屋(なごや)市中川区(なかがわく)のベテランの稲作農家(いなさくのうか)、服部是巳(はっとりよしみ)さん(84)です。その理由(りゆう)は田植え後、苗(なえ)が水に漬(つ)かることで根付(ねつ)きが良(よ)くなるから。

 けれど、この三十年ほどでその時期(じき)は早まってきたそうです。秋の台風までに稲刈(いねか)りが終(お)わるように早生(わせ)の品種改良(ひんしゅかいりょう)が進(すす)み、用水路(ようすいろ)などの完備(かんび)で水をコントロールできるようになったから。服部さんも梅雨前に田植えをするそうです。「最近(さいきん)の心配(しんぱい)は、梅雨の豪雨(ごうう)が多いこと。稲が水に漬かりすぎ、田植えをやり直した年もある」と言います。

 「日本各地(かくち)で梅雨の時期の大雨は増(ふ)えていて、地球温暖(ちきゅうおんだん)化(か)が関係(かんけい)している可能性(かのうせい)が高いです」と指摘(してき)するのは、海洋研究開発機構(かいようけんきゅうかいはつきこう)の研究員(いん)、茂木耕作(もてきこうさく)さん(42)。二〇一二年の梅雨に起(お)きた九州北部(きゅうしゅうほくぶ)豪雨を調(しら)べた結果(けっか)、東シナ海の表面(ひょうめん)の水温が高くなったことが豪雨の一因(いちいん)と分かりました。

 恵(めぐ)みも、豪雨ももたらす梅雨。「雨や水温のデータはインターネットでも見られるので、皆(みな)さんも調べてみて。長雨は憂鬱(ゆううつ)ですが、深(ふか)く知れば面白(おもしろ)いですよ」と語ってくれました。

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索