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知るコレ!

シリアの子どもたち  

カタールスクールで、音楽の授業(じゅぎょう)を受(う)ける小学5年の男子児童(じどう)=2017年、ヨルダン北部(ほくぶ)のザアタリ難民(なんみん)キャンプで(NPO法人国境(エヌピーオーほうじんこっきょう)なき子どもたち提供(ていきょう))

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 中東(ちゅうとう)のシリアは2011年から始(はじ)まった内戦(ないせん)が7年に及(およ)び、560万人以上(いじょう)のシリア人が国外へ逃(のが)れています。周辺国(しゅうへんこく)の難民(なんみん)キャンプで暮(く)らす子どもたちはどんな日常(にちじょう)を送(おく)っているのでしょうか。隣国(りんごく)ヨルダンにあるキャンプ内の公立学校を支援(しえん)するNPO法人(エヌピーオーほうじん)「国境(こっきょう)なき子どもたち」(東京(とうきょう))の松永晴子(まつながはるこ)さんに聞きました。 (福沢英里(ふくざわえり))

 シリアとの国境(こっきょう)から約(やく)15キロ、ヨルダン・ザアタリ難民(なんみん)キャンプ。コンテナをトタン板(いた)でつないだ簡素(かんそ)な住宅(じゅうたく)が広がっています。8万人近いシリア人が暮(く)らし、まるで1つの町のようです。「内戦(ないせん)直後は貯水(ちょすい)タンクが7世帯(せたい)に1つで衛生状態(えいせいじょうたい)も良(よ)くなかったのが、今は世帯ごとにあります」と松永(まつなが)さん。2014年から現地(げんち)の支援(しえん)に加(くわ)わり、今はカタール政府(せいふ)が建(た)てた「カタールスクール」の生徒(せいと)ら約840人を受(う)け持(も)ちます。

 子どもたちの1日を教えてもらいました=表(ひょう)。生徒数が増(ふ)え、授業(じゅぎょう)は午前は女子、午後は男子と分けています。家族(かぞく)や親戚以外(しんせきいがい)、男女は親しくしないという宗教(しゅうきょう)上の配慮(はいりょ)です。小学生は学校のほかに国連児童基金(こくれんじどうききん)(ユニセフ)などが開設(かいせつ)するセンターで補習(ほしゅう)授業を受け、家のお手伝(てつだ)いも。習(なら)い事(ごと)に忙(いそが)しい日本の小学生とは違(ちが)いますね。中学生はテレビを見る時間が長くなっています。キャンプでは本が少なく、通信(つうしん)状態も悪(わる)いため、テレビは数少ない娯楽(ごらく)。外からの情報(じょうほう)を得(え)る手段(しゅだん)になっています。

 松永さんが力を入れるのは、音楽や演劇(えんげき)などの情操教育(じょうそうきょういく)。教えるのは、現地で採用(さいよう)したヨルダン人やシリア人の教員(きょういん)です。子どもたちは授業中、答えが分からなくても積極(せっきょく)的に手を挙(あ)げ、屈託(くったく)のない姿(すがた)を見せます。一方、「共感力(きょうかんりょく)の低(ひく)さ」が気になるときがあり、「内戦で傷(きず)つき、つらいことがあってもそれを深(ふか)く考えたり想像(そうぞう)したりするのを避(さ)けてしまう」といいます。

 昨年(さくねん)9月にはキャリア教育に挑戦(ちょうせん)。でも保護者(ほごしゃ)に仕事(しごと)の話を聞くという宿題(しゅくだい)を課(か)すと、「働(はたら)く所(ところ)もろくにないのに話したくない」と父親が口を閉(と)ざすなど思うように進(すす)みませんでした。キャンプにたどり着(つ)くまでシリア国内を転々(てんてん)とし、目先の生活で手いっぱい。子どもを早く結婚(けっこん)させたり、兵役(へいえき)に出したりする親もいます。それでも「教育を受けることこそ一番の武器(ぶき)」と松永さんは諦(あきら)めません。

 地図を見てみましょう。中東諸国(ちゅうとうしょこく)に囲(かこ)まれたシリアはヨーロッパとアジア、アフリカを結(むす)ぶ地域(ちいき)で、「文明の十字路(じゅうじろ)」と呼(よ)ばれました。ローマ帝国時代(ていこくじだい)をしのぶ「パルミラ遺跡(いせき)」など6つの世界遺産(せかいいさん)があります。

 「農業国(のうぎょうこく)であり、優秀(ゆうしゅう)な人材(じんざい)を供給(きょうきゅう)する国」と、鈴木規夫(すずきのりお)・愛知(あいち)大教授(きょうじゅ)(政治哲学(せいじてつがく))。香辛料(こうしんりょう)をきかせて羊(ひつじ)の肉を焼(や)いた「ケバブ」や、北部(ほくぶ)の都市(とし)アレッポ産のオリーブオイルのせっけんは日本でも有名(ゆうめい)です。

 一方、20世紀(せいき)に周辺(しゅうへん)諸国に石油資源(せきゆしげん)が見つかり、シリアを操(あやつ)れば経済(けいざい)や軍事(ぐんじ)面(めん)で有利(ゆうり)とみるアメリカやヨーロッパの戦略(せんりゃく)に振(ふ)り回されてきました。2011年、北アフリカのエジプトやチュニジアで起(お)きた民主化運動(みんしゅかうんどう)「アラブの春」がシリアにも飛(と)び火してアサド政権(せいけん)に反発(はんぱつ)するデモが起き、政府(せいふ)と衝突(しょうとつ)して戦争状態(せんそうじょうたい)に。一時は過激派組織(かげきはそしき)「イスラム国」(IS(アイエス))が拠点(きょてん)を置(お)き、先月はアメリカなどからミサイル攻撃(こうげき)され、終息(しゅうそく)は遠い気配(けはい)です。

 それでも、復興(ふっこう)し始(はじ)めた一部の街(まち)で最初(さいしょ)にできたのがコーヒーハウス。「甘(あま)いお菓子(かし)とお茶を傍(かたわ)らに語らうのが好(す)き」な人々です。鈴木教授は「長い歴史(れきし)で見れば、シリア人は復興に向(む)かう力がある。まずは食文化でもいい。関心(かんしん)を寄(よ)せてほしい」と話します。

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