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知るコレ!

酸素をつくり出す源 葉緑体

左は、さまざまな倍率(ばいりつ)で観察(かんさつ)した桜(さくら)の葉(は)。(下)は横断面(おうだんめん)で、緑(みどり)の小さな粒(つぶ)が葉緑体(ようりょくたい)。右は、(上)オオカナダモの葉の細胞(さいぼう)。緑の丸いものが葉緑体。(下)トウモロコシの葉緑体の電子顕微鏡写真(でんしけんびきょうしゃしん)(坂本教授提供(さかもときょうじゅていきょう))

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 新緑(しんりょく)の季節(きせつ)。この美(うつく)しい緑(みどり)の源(みなもと)は、葉(は)っぱの細胞(さいぼう)の中にある葉緑体(ようりょくたい)です。春にもえぎ色だった葉は徐々(じょじょ)に青々とし、秋には黄色や赤になります。5月4日の「みどりの日」を前に、季節に伴(ともな)う葉緑体の変化(へんか)や、その起源(きげん)について調(しら)べてみました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 「光合成(こうごうせい)」という言葉(ことば)を聞いたことはありますか? 光合成とは、太陽(たいよう)の光のエネルギーを使(つか)って、空気中の二酸化炭素(にさんかたんそ)と水から、でんぷんという栄養(えいよう)と酸素(さんそ)をつくる植物(しょくぶつ)などの営(いとな)みのことです。

 「光合成をしている場所(ばしょ)が、葉(は)の細胞(さいぼう)の中にある葉緑体(ようりょくたい)なんですよ」と話してくれたのは、葉緑体を研究(けんきゅう)している坂本亘(さかもとわたる)・岡山(おかやま)大教授(きょうじゅ)(55)です。葉緑体は円盤状(えんばんじょう)で、大きさは約(やく)5マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)。多い時は、1つの細胞に数百個存在(こそんざい)するそうです。

 「葉緑体が、その名の通り緑(みどり)に見えるのは、葉緑体の中にある葉緑素という色素(しきそ)が光合成のために青や赤色の光を吸収(きゅうしゅう)し、緑色の光をはね返(かえ)すからですよ」

 では、新緑の時季(じき)、葉緑体はどのように生まれるのでしょう。坂本さんによると、多くの木は春の気配(けはい)を感(かん)じると芽(め)の中に葉の赤ちゃんをつくり始(はじ)め、その細胞の中には小さくて無色(むしょく)の葉緑体の赤ちゃんを持(も)つのだそうです。光が当たると葉緑素がつくられ、葉緑体は数が増(ふ)えサイズも大きくなります。季節(きせつ)が進(すす)み、葉の緑が濃(こ)くなるのは、葉緑体がどんどん増え、葉緑素が密(みつ)になるから。光合成も活発(かっぱつ)になり、でんぷんを多くつくって、木全体(ぜんたい)に栄養を行き渡(わた)らせます。

 冬になると、常緑樹(じょうりょくじゅ)は葉があるので光合成を続(つづ)けますが、落葉樹(らくようじゅ)は葉を落(お)とし光合成をしなくなります。それに備(そな)え、秋には無駄(むだ)な葉を捨(す)て次(つぎ)の葉をつくる用意(ようい)を始(はじ)めます。初期(しょき)には、葉の細胞内の葉緑素やタンパク質(しつ)がどんどん壊(こわ)され、小さな栄養分となって木全体に回収(かいしゅう)され蓄(たくわ)えられます。

 葉が枯(か)れる直前には、葉緑素が分解(ぶんかい)され、葉の細胞の中の別(べつ)の色素が残(のこ)った状態(じょうたい)に。「黄色っぽいカロチノイドや、赤いアントシアニンなどの色素が残った時に紅葉(こうよう)が楽しめます。その後、葉は枯れて地面(じめん)に落ち、腐葉土(ふようど)になって栄養分として木々に吸収(きゅうしゅう)され、次の春への備えになります。うまくできていますね」と話してくれました。

 さて、葉緑体(ようりょくたい)を語る上で欠(か)かせない生(い)き物(もの)が、35億(おく)年前に登場(とうじょう)し、地球(ちきゅう)の運命(うんめい)をがらりと変(か)えたラン藻(そう)(シアノバクテリア)です。葉緑素(そ)を持(も)ち、光合成(こうごうせい)をしたおかげで、太古の地球の大気に酸素(さんそ)が蓄積(ちくせき)。その酸素を使(つか)って陸上(りくじょう)で呼吸(こきゅう)する生き物が生まれ、ヒトの誕生(たんじょう)にもつながりました。

 実(じつ)は、この古ラン藻が葉緑体の起源(きげん)です。葉緑体の中のすべての遺伝情報(いでんじょうほう)を初(はじ)めて明らかにした杉浦昌弘(すぎうらまさひろ)・名古屋(なごや)大特別教授(とくべつきょうじゅ)(81)は、「古ラン藻を別(べつ)の生き物が取(と)り込(こ)む『細胞内共生(さいぼうないきょうせい)』が、10億〜20億年ほど前に起(お)きたといわれています」と言います。

 単(たん)細胞の小さな動物(どうぶつ)プランクトンなどは、食べ物を体内に取り込み消化(しょうか)します。大昔(おおむかし)、古ラン藻を取り込んだ生き物が、そのまま体内に生かし、それが葉緑体になったということです。証拠(しょうこ)の1つは、今生きているラン藻の遺伝子の一部(いちぶ)と葉緑体の遺伝子がとても似(に)ていること。「葉緑体の中には、古ラン藻の遺伝子の秘密(ひみつ)が残(のこ)っているんですよ」と杉浦さんはにっこり笑(わら)いました。

 皆(みな)さんも木の葉(は)を見たら、葉緑体や地球の歴史(れきし)に思いをはせてみてね。

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